「演劇的な映画」スパイの妻 劇場版 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
演劇的な映画
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ベネチア映画祭で、銀獅子賞を受賞した作品。最初にNHKのテロップが出た所で、以前、BSで放映していたのを思い出した。いよいよNHKも映画業界に進出ですか…?
戦前のハイソサエティな貿易商を営む福原優作とその妻聡子が主人公。その台詞が、文学的で、滔々と交わされる台詞が印象的のため、映画というより、舞台演劇のような感覚の作品。そのシーンの台詞を、熱く語れる高橋一生と蒼井優は、流石に一流の役者。
タイトルは、スパイの妻となっているが、決して夫・優作は、スパイではない。日本軍が満州で繰り広げていた卑劣を極めた人体実験を知り、人道的な見地から世に知らしめる為に、自らの考えで国家に反旗を翻した反逆者。
その妻は、たとえ夫が反逆者であっても、ただひたすら夫を信じ、愛する夫の為なら身が滅びようとも厭わない献身さ。芯の強さと共に、猟奇さも感じさせる。それを蒼井優が、見事に演じている。
そんな夫婦の間に入り込むのが、聡子に恋心を寄せる東出昌大扮する憲兵隊長。聡子に対する恋心が、戦況の悪化と憲兵としての立場によって、次第に頑なに心を閉ざし、変貌していく迫真の演技も、なかなかよかった。
そして、いよいよクライマックスの騙し合い。ここで初めて優作の裏切りと聡子の強かさが、明らかになっていく。しかし、これもまた、フェイクなのか? 互いへの愛の証なのか? いろいろな解釈の余韻を残してエンドロール。
昔のフランス映画のような内容で、外国人受けする展開。ベネチア映画祭で高評価を得たのも納得。
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