「釈然としない」スパイの妻 劇場版 hzwrさんの映画レビュー(感想・評価)
釈然としない
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聡子が優作を告発したあたりのところ(訂正:優作を告発したというのはミスリードで実際には文雄だが)は、話に無理があるのではないかと思った。結果的に優作は釈放されたがあまりにもリスクが大きい行動であるし、それに見合ったメリットがあったとも思えない。しかもここで優作が釈放されたことで話の緊張感が薄れてしまった。
優作が聡子を裏切るところも動機が弱いと思ったし、互いに密告し合うということをやりたかったという作り手の意図のほうを感じてしまった。
(後から考えると、優作が初めからアメリカのスパイで、人体実験を告発することではなくデータをアメリカに届けることが目的だったと考えると、最後の字幕とつじつまがあうし聡子を裏切ったのも納得がいく。しかしその場合もなにを聡子が「お見事」だと思ったのかやはりよくわからない)
スパイの妻というタイトルである割に、優作は(少なくとも表面上は)スパイではなく正義の人であるし、聡子もそれほど愛国者ではないので、国か夫かといった葛藤はなく、二人の幸福か大義か、といったセカイ系的な主題になってしまっている。憲兵の権力が身内である泰治に集中しているのもアニメ的で、話のスケールが大きい割に少人数の人間関係で話が完結しており、歴史を舞台にしたことの重みが感じられなかった。
セットはよくできていて雰囲気がよく出ていた(「いだてん」の物を流用しているらしい)。
夫婦像や台詞回しが昔の映画のようであり、時代設定に合っているとはいえるが、若干モノマネをしているようにも感じた。
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