劇場公開日 2020年10月16日

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「今年の『幕切れがみごとで賞』最有力候補作品。」スパイの妻 劇場版 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今年の『幕切れがみごとで賞』最有力候補作品。

2020年10月26日
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鑑賞方法:映画館

全編にわたって見事な美術と俳優の演技を味わった作品でした。

もちろん主演の蒼井優も素晴らしいけど、高橋一生らもさすが。特に印象に残ったのは彼らの台詞。一歩間違えば新劇のパロディーともなりかねないような、やや時代がかった言い回しなんだけど、俳優達の発声、会話の間に全く不自然さを感じなくて、聞く度その美しい言葉に、背筋が自然に伸びる思いでした。

黒沢清監督ということで、どこかで精神的に病みそうな場面があるんじゃないかと、半分ひやひや、半分期待して見ていたんですが、途中のある場面で「うっ…」となる程度で、黒沢作品としては珍しく(?)、あまり心を掻き乱されることもなく、落ち着いて画面に集中することができました。話が進むにつれ、ちょっと怪しげな密閉空間が出てくるといった、お約束とも言えるような要素をきっちりと入れ込んだ上で、一つの筋の通った物語にまとめ上げるあたり、さすがの手腕。

監督は結構ラジオや雑誌のインタビューで本作について答えていて、こちらも面白いです。本作は比較的低予算映画との事ですが、それにも関わらず、見事なセットや衣裳を揃えることができたのは、某ドラマのおかげだったとか、物語のどこを幕引きにするか幾つか候補があったけど、編集を最後まで仕上げた上で、今回の形にした、などなど。

結末には賛否があるようだけど、その切れ味にはしびれました。ちょっと『CURE』(1997)の不思議な余韻を思い出しました。

yui