劇場公開日 2020年10月16日

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「作りこまれた映像とストーリーに「お見事です!」」スパイの妻 劇場版 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0作りこまれた映像とストーリーに「お見事です!」

2020年10月18日
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鑑賞方法:映画館

久しぶりに映像、画角、ひとつひとつのセリフの言い回しにまでこだわった日本映画だと思う。
特に前半の夫婦の会話のシーンでは、まるでヒッチコックのような、影にまでこだわった映像。
顔のアップのシーンの入れ方といい、さすが黒澤清監督、贅沢なものを見せてもらいました。という感じ。
しかし、中盤からのストーリー展開は、グッと確信に迫り、それまでのサスペンスの要素より、
もっと、重い事実を突きつけてくる。

ミッドウェイを観た後も書いたが、日本軍が731部隊で行った残虐な行為も事実であり、戦争での加害者である側面を日本人である私たちは、世界に向けて発信していない。
この映画が、銀獅子賞を取ったことは、ある意味、映画としての評価共に快挙だと思う。

観終わった後に感じたことは、なぜ、ベネチア国際映画祭で、銀獅子賞を受賞したにもかかわらず、この映画の中で出てくるこの事実について、マスコミなどでは、あまり語られていないように感じること。
もちろん、公開直後なのでネタバレに近いことになってしまうのかもしれないが、それ以上に、戦争での
加害者という側面に対して、触れて余計なトラブルを起こしたくないという気持ちが働いてはいないだろうか。

高橋一生演じる福原は、自分はコスモポリタンだと言っていたが、この時代に自分の信念と正義を命をかけて守ろうとする人もいれば、戦後75年も経ったにもかかわらず、起きていた事実に対して正面から向き合わない私たち。

世界がこの映画の何に評価をしたのか、今一度、考えてみてもいいのではと思う。

七星 亜李
レモンブルーさんのコメント
2021年3月29日

亜季 七星さん はじめまして。「Fukushima50」に 共感をありがとうございますm(__)m。
スパイの妻は優れた映画だと思いますが、日本アカデミー賞に 全くどの部門もかすってなかったのは、やはり731部隊の事が関係しているからでしょうか。昨年は「新聞記者」が選出されたのに…何だか ガッカリです。

レモンブルー