劇場公開日 2020年10月16日

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「お見事!画が素晴らしく、映画を見たなという充足感」スパイの妻 劇場版 よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5お見事!画が素晴らしく、映画を見たなという充足感

2020年10月17日
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お見事!君に嘘をつくようにはできていないのだから --- 敵を騙すにはまず味方から。久しぶりに、あぁ"映画"見たなという充足感に満たされた。どの画を切り取っても素晴らしく決まっていて、意味が伝わってくるよう。例えば作中でも言及されている溝口健二のように距離のあるカメラワークで、とにかく動き回る演者を捉える。画作りが極上、見せ方がうますぎる。役者陣(言わずもがな主役二人)に、例えば衣装(優作の着ていた洋装すべてほしい)、美術、照明、撮影といったスタッフの才能と尽力・連携、そして何より黒沢清監督の新たな傑作誕生。NHK得意の歴史モノと4K/8Kといった技術革新を持ってして、自身にとって新たなジャンルに挑む監督の本気を見た。
役者・蒼井優 × 高橋一生のスゴさ。蒼井優は言わずもがな圧巻に、裏表なく健気な妻像を演じながら、夫の秘密を知り葛藤しつつも夫にこれほどにかと一途な様 = 愛を体現する。おかげで僕たちは、(会話シーンで切返さず)話し手でなく聞き手の反応を映すという鏡の役割を果たす方法も相俟って、巻き込まれる側である妻が主人公であることの意味・意義を感じ取ることができる。ものすごく惹き込まれた、魅せられた。例えば話の筋だけ追いかけるなら普通、夫・優作パートをメインに据える方が簡単だろう。敵対する東出昌大が適材適所に国家の犬として分かりやすく全力の薄気味悪さ(小物感?)を出すのに対し、高橋一生は裏で何を考えているのか分からず、底の見えぬ多面性と、そうしてでも成し遂げねばならないという意志の強さを丁寧に出している気がして恐れ入った。自分のことだけを考え行動する妻すらも(語弊を恐れずに言ってしまえば)目的を果たすための手段・道具にように使うのか?それとも…

万死に値する

P.S. 念の為書いておくと、一生必殺の顔をクシャッとしたキラースマイルも何度か見られますよ!にしても甥かわいそう

今年映画館鑑賞57本目たぶん

とぽとぽ