「過去から今へ、今から過去へ」名も無き世界のエンドロール aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
過去から今へ、今から過去へ
正直あまり期待していなかったのもあるのだけど、予想以上の面白さ。張り巡らされた伏線とその回収の小気味良さ。テンポも早すぎもせず、ダレることもなく、ちょうど良い。アイドル映画というわけでは無く、気軽に観れるものの中身はなかなか硬派のサスペンス映画だ。
幼なじみの親友であるマコト(新田真剣佑)とキダ(岩田剛典)。ドッキリを仕掛けることが大好きなマコトと、どこか冷めたところのあるキダ。そんな二人にヨッチ(山田杏奈)が加わり、三人組で学生時代を過ごしてきた。その過去と、今が交互に語られ、物語が進んでいく。今 には何故かヨッチはいない。それどころかマコトは、高嶺の花のモデルであるリサ(中村アン)に熱を上げていて、観る側として違和感がある。何かあったのか気になる。この瞬間、この映画の術中にはまるわけだ。過去は今へ向けた物語が綴られ、今は過去の事実が次第に明らかになっていく。綿矢りさの「イニシエーション・ラブ」を彷彿とさせるが、こちらの方がシンプルで混乱は少ない。
冒頭、いきなり岩田剛典が、サンタの衣装で人混みを歩いていくシーンが楽しい。まず、この格好が伏線。携帯で話しながら歩くわけだが、マコトから「お前にもサプライズ用意してる」と言われて、これもまた伏線。
そこから過去のシーンに飛んで、キダがマコトのドッキリに引っかかるくだりがある。よく振ったコーラを渡される他愛の無いイタズラなのだが、このコーラが重要な小道具として、物語の各所に散りばめられる。(劇中では、WowColaという銘柄だったようだが、公開にあわせて発売しても良かったのでは。)
こうした細かい仕掛けがあちこちにあり、それらが物語のラストに向けて収斂されていくのは、観ていて気持ち良い。他にもいくつも、「あぁ、あれか!」というところが何度もあり、これがとても楽しいのだ。
新田真剣佑は、アクション俳優のイメージだったけど、本作ではなかなかの演技派。岩田剛典は、相変わらずの安定したイケメンぶり。山田杏奈、中村アンはそれぞれの役どころを熱演。この二人は最近の注目株で、今後の活躍が楽しみ。山田杏奈は、いろんな役柄が出来そうな感じで、振り幅がいろいろありそう。中村アンは、凛とした佇まいの美人ながら、元気なイメージがいい。大きな眼に感情が乗ってくると面白いと思う。榎本明も脇を固めていて、いいアクセントになっていた。
後半に入ったあたりで展開は読めてくるのだけど、それでも構成が面白く、充分楽しめる。思わぬ拾い物をした作品だ。