劇場公開日 2020年8月16日

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「はりぼての正体。」はりぼて レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5はりぼての正体。

2024年1月20日
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今、日本の政界を揺るがしている自民党派閥による裏金問題。本作はまさにその壮大な前振りとも言える富山県で起きた自民党会派を中心とした政務活動費問題を描いたドキュメンタリー。

雄大な立山連峰を望む富山の街、その中でもひときわ近代的で奇抜なデザインの富山市庁舎。そこには不穏な烏の大群が群がっていた。公金という名のえさに群がる烏の群れが。

そこでは今まさに市議会議員給与引き上げ条例が市民の反対を押し切り可決されようとしている。それを主導した会派のドンに言わせると、今の給与では退職後年金だけではやっていけないからだという。しかしそれは市民も同じだ。また別の理由として議員は雪かきなどもやってるからだという。確かに雪国では少子高齢化で人手が足りないとはよく耳にするがまさか議員さん自身がやってるとはねえ、て議員がやってどうする。人手が足りないことに対して対策考えるのが仕事でしょう。まあ、実際にはやってないだろうけど。
このドンが行っていた政務活動費の不正が発覚するのを皮切りにとめどもなく不正があらわになってゆく。

ここからはまさにコントか漫才を見てるかの様相に。出てくる議員出てくる議員皆一様にすぐばれるような噓言い訳をしてはその後観念するといった感じで、まさに漫才のフリとオチといった具合だ。不正を働き心機一転出直した老議員が再び不正を記者から問われた時、俺にわかるわけないだろうと言い返した時には爆笑してしまった。そんな議員の再選を許したのは有権者だ。
その後もパターンは踏襲され、一見誠実そうな議員、汚職を熱く糾弾していた議員もやはりその後不正が暴露される。
議長を何度変えても不正が発覚するもんだから最終的に議員になりたての人間が選ばれていた。議員やってなかった人間しか清廉潔白な人間はいなかったというオチ。
また肝心の市長は終始傍観者ヅラして制度論的に口を出せる立場にはないとの一点張り、自分の部下が記者の開示請求を漏洩させてる事実についても議会のせいにして責任逃れ。まさに見た目通りの狸だ。

散々笑わせてもらい不正を働いた議員が成敗されてゆく様を見て溜飲が下がるが、後半では笑えなくなる。飛ぶ鳥ならぬ烏を落とす勢いだった取材チームが局によって解散させられてしまう。時期的には第四次安倍内閣発足時、チューリップテレビも御多分に漏れず忖度を強いられたということだろう。

だが取材チームはよくやった。民主制の過程で有権者に情報を提供するという報道の役割を十分に果たした。後は有権者に託された。

今回の裏金問題も予想通り検察は適当なところで手打ちにしようとしている。そもそもあれだけ派閥幹部の逮捕もありうるのではと期待させておいて会計担当者の逮捕で済ますなどと失望した人も多いはず。共謀の事実を証明できないからなどと聞いた風なことを言ってるが今まで散々人質司法でもって自白強要してきた検察が何を言うのか、国会議員に対しても同様に動機を自白させて起訴にでもなんでも持ち込めたはずだ。
所詮は政権と同じく検察も権力機構に過ぎない。彼らに期待するのは腐敗した政権に自浄作用を求めるくらい愚かなことだ。

政権も派閥の問題に矮小化してことを収めようとしているが、これでは政治とカネの問題を根本的に解決することにはならない。

結局は主権者たる国民に最終的な判断がゆだねられている。このような政権を許すか許さないか。ただ今回のことを次の選挙まで有権者が記憶してるかどうか、それ以前にこれで解決したと思ってる有権者も多いのではないか。

はりぼてという本作のタイトルの意味を考える。立派な富山市庁舎の建物、その中には公金に群がり市民のことなど全く考えてない議員しかいない。まさにこれをはりぼてというのだろう。だが、主権者たる国民が自分の主権を行使もせず腐敗政治を野放しにしている、民主主義を空虚なものにしてしまってる今のこの国の状況を見ていると、この国ははりぼての民主国家なのではないかと思った。

レント
Mさんのコメント
2024年1月23日

配信で探して見てみますね。

M