「私たちははりぼてであり、政治家はカラスである」はりぼて 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
私たちははりぼてであり、政治家はカラスである
カラスが良い。カラスのインサートショットや本筋とは関係ない公園のカラス駆除のエピソードが挟まれるのだが、これが良いメタファーとして機能している。
公園課の職員が「カラス禁止」の立て看板を設置しながら言う。「カラスは看板の文字を読めないけど、公園に来た市民がカラスを監視してくれればいなくなる」。
富山市議会の屋根に大量のカラスが群がるショットがある。不正を働く市議会議員たちは、汚い金に群がるカラスのようなものだと言っているわけだ。そして、それは市民が監視をせねばならない。
その権力の監視役たるメディアがこの作品の主人公だ。地道な調査報道で領収書の捏造を暴き、多くの市議を議員辞職に追い込むことに成功する。だが、不正が次から次へと発覚し、次第に議員側もスキャンダル慣れしてしまい、辞職しなくなっていく。結局、何も変わらないことに愕然とする。
メディアが主人公だが、メディアを持ち上げるわけでもなく、自分たちもまた「はりぼて」であることを示唆して映画は幕を閉じる。市民も政治家もメディアもはりぼてから人間にならないといけない。
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