「何が「はりぼて」なのか?」はりぼて yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
何が「はりぼて」なのか?
富山県市議会の自民党議員達の「政務活動費」不正使用に関するドキュメンタリー。
監督は、富山県のTV局「チューリップテレビ」に在籍する/していた五百旗頭(いおきべ)さんと砂沢さんの二人。この作品中に何度も登場する。日本には珍しい、「ジャーナリスト」と本当の意味で言える存在だ。
この二人が中心になって、市議会議員の政務活動費に関する情報公開請求を行って領収書などの情報を集めまくり、徹底的に調べていく。すると、「あれ?この領収書おかしいぞ」という情報がボロボロと出てくる。そして、それを報道する。その結果が14人の議員の辞職。中には不正受給が発覚したのに、まだ現役で議員を続けている人もいる。
議員達の言い訳が聞いていて面白い。
まさにコメディ。
しかし、これは「現実」だ。
皆が感じている通り、これは日本の縮図だ。
これが富山県市議だけの問題なわけがない。日本中の議員も似たようなものだろう。もちろん国会議員も。富山県市議の人たちは取材で「認めている」だけまだマシとも思えてしまう。
森友や加計、桜を見る会、黒川問題、ゴハン論法などを見るにつけ、国会議員のモラル低下の方がよほど問題の根が深い。議員のトップである総理大臣があの体たらくなのだから、地方などその他の議員のモラル低下は当たり前とも言える。そして、新しい菅政権の面子。「5G」と揶揄されているが、とにかく「爺さん」ばかり。頭の中はまだ「昭和」な人々。この作品で追求されているのも同じ爺さんである。どこを見ても年取った男ばかり。政治に関する未来が全く想像できない。まさに縮図だ。
(例外として若い議員が不法侵入で起訴されていたが、これも何かを象徴してる気がする。。)
結末として、五百旗頭さんはチューリップテレビを退職してしまう。
おそらく政治から圧力があったのだろう。局が忖度したのが見ていてわかる作りになっている。
政治もメディアも「はりぼて」だ。
これは富山県だけではない。日本中のすべてが「はりぼて」。段ボールで作った城みたい。
そして、当然それはその城の中に住んでいる市民・国民が原因だ。自分たちがどんな場所で暮らしているのか、全く関心がないのだから。コロナで少しだけ政治に注意が向いたけど、まだ数ヶ月しか経っていないのに、あの騒動をすでに忘れてしまった感すらある。コロナはまだ継続中で打てる対策はいくらでもあるはずだが、メディアはどこも「菅政権」一色。無責任に政権を放り出した人へのご祝儀で支持率をあげる国民。本当にどうしようもない。
できるだけ早いうちに、日本社会は一度崩壊してしまった方が良い。
ただ、この映画には「希望」が少し残っている。
メディアが正常に機能すれば、こういった不正をいくらでも明るみに引きずり出すことができる、ということを、五百旗頭さんや砂沢さんが証明してくれたことだ。
国レベルでも同じことを起こすことができる。
国会議員を厳しく追及していけば、間違いなく同じ結果を引き出せるだろう。
まぁ、その国政メディアの各局こそが、「記者クラブ」という日本で最大の「はりぼて」を構成する組織なわけだが。。。
最後に1つ。
まだ局に在籍してるだろう砂沢さんもこの作品の監督として名を連ねている。
勇気ある行動だ。退職という決断をした五百旗頭さんも同じ。
いつの時代でも、期待できるのは新陳代謝を起こせる若い人たちだ。
その希望を最後に感じられたのは良かった。
爺さん連中は、せめてその若い人たちの「邪魔」だけはしないことを願いたい。