「清々しい」はりぼて Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
清々しい
富山市にあるチューリップテレビの記者が、富山市議会議員の政務活動費の不正利用を追求してくのね。たぶん発端は、市議会議員の給与引き上げ条例が、お手盛りで可決されたことなの。
そこから、情報請求で政務活動費の領収書を入手して、実際には行われていない市政報告会で配られたとされる資料の印刷代を見つけんのね。
「これ、おかしいですよね」って市議会議員にぶつけると、最初はごまかすの。でも市議会議員も「お前の質問には答えない」という感じではなくて、「質問には答えるよ」って対応すんのね。当たり前のことなんだけど、それだけで、いいなと思った。
で、質問をごまかしながら答えるんだけど、もう言い逃れできなくなって、けっこう簡単に不正を認めんの。それで議員辞職するの。不正をしてるのは一人じゃないから、次から次へと辞職で、もう大変だね。
不正もちょっと調べたらすぐ解るようなやつなの。それで口裏あわせも甘いから、すぐボロが出るんだよね。追求する記者側もうまくて、最小限の情報だけ出しながら、供述の矛盾を引き出してくの。
みててチューリップテレビの五百旗頭記者がキレ者なんだって解ってくるのね。この人が作戦立てて、インタビューも「こういう順番で聞いていけ」ってリハーサルしてたんじゃないかな。
市議会だから地元の名士が「まあまあ、やあやあ」でやってるんだよね。そこに若くて頭のキレる奴が切り込んでいったら、そらもうボロボロになるよ。だから追求される議員の方も「もう、そんな細かなところいつまでもツッコまないでよ」って感じなのね。
思ったのは、富山市の他の報道機関は何やってたんだってことね。多分、その気になれば、不正は暴けたはず。でもそこは大きな問題だと思わなかったか、市議会となあなあだったかのどっちかなんだろうと思う。
追求してくと、どんどん市議会議員のボロが出てきて、疑惑だらけなの。さあ、この調子でやってくのかと思うと、権力側の逆襲っぽいのが出てくる。五百旗頭記者と一緒にやってた砂沢記者が報道から外されんの。「経理です」って言ってたけど、まあ、左遷だね。どこかから、チューリップテレビ上層部にプレッシャーかかったんだよ。
地方局だから、スポンサーも地方だよね。その中には、疑惑の会派の支持者もいるはずで、そこから「広告とめるよ」と言われたら逆らえないとか、そんな事情があったんだろうなあと思ったよ。
五百旗頭を外すとハレーション大きいから、砂沢にしとこってのが、嫌らしいね。
そして、そうした動きを感じ取ったのか、五百旗頭記者はチューリップテレビ辞めるの。
ラストは別の記者が頑張って市議会議員に突撃してるんだけど、芸能リポーターみたいな感じになっちゃってて、あしらわれてた。五百旗頭記者や砂沢記者みたいな、押したり、引いたり、うまいことやりながら何かを引き出すってのはできないの。市議会議員側にしてみれば、安泰だね。
権力は腐敗しちゃうから、市議会議員たちのためにも、報道がきちんと監視できた方がいいんだよね。それで、今回は、ある程度それが働いたの。でも、なあなあのところもある。信頼してる議員に対しては、追求が甘くなってるしね。
この付かず離れずのバランスを保ちながら、互いにコミュニケーションをとって、「富山市にとって何が良いことなのか」を考えていくことができるといいなと思ったよ。