旅立つ息子へのレビュー・感想・評価
全33件中、21~33件目を表示
レンチンよりも茹でたてパスタ
息子の将来を考え母親タマラが探した施設に入ることが決まっている自閉症スペクトラムの青年ウリと、息子を施設に連れて行く父親アハロンの回り道の話。
父親と離れることを嫌がるウリが施設へ向かう列車の乗り換え駅で騒ぎ出し、巻き起こっていくストーリー。
アハロンとタマラの深い関係性と、年収9万ドルの仕事を辞めて田舎町で暮らすまでの経緯がが明確ではないけれど、イマイチ乗り気でないアハロンの様子は子離れ出来ない親という感じを受けるし、暴れるウリの様子を知らず電話口でヒステリックになるタマラもヒガミなのかと。
自閉症スペクトラムということがなければ、ただの親離れ出来ないバカ親なんだろうけど、一方的に抑えつけるのも違うし、難しいところ。
一見チャラいだけに見える弟が、第三者として実は一番ちゃんとみえているというのもアクセントとして良かったし、家族3人それぞれの落としどころも文句なし。
メインはアハロンの成長物語ということでw
大きな波は無いけれど、なかなか好みの作品だった。
【"子離れ、そして、手書きの自動ドアのボタン。”"僕はもう、”チャップリン”に頼らずとも、生きていくのだ・・。” 】
ー 自閉症スペクトラム障害の息子ウリ(ノアム・インベル)を、過保護なまでに面倒を見る父アハロン(シャイ・アヴィヴィ)の姿。
別居中の妻タマラは、成人を迎えるウリの自立支援のため、全寮制の施設への入所を主張し・・。ー
■感想<Caution! 内容に触れています。>
1.ウリを演じた、ノアム・インベルの自閉症スペクトラム障害の演技の凄さ。
・私は鑑賞中、彼が実際にスペクトラム障害を持っていると思って、観ていた。
・彼が、列車のホームで大暴れするシーンを筆頭に・・。
2.ウリの自閉症スペクトラム障害ならではの、数々の拘りと作品構成の巧さ。
・ウンベルト・トッツィの「Gloria」をかけながら、アハロンと楽しそうに髭を剃る姿。
・金魚の、ヨニとダロンとダニエルを溺愛するがゆえに、魚料理が食べられない。
・オリーブ抜きのピザが好き。
・自動ドアは、挟まれるから嫌い・・。
・そして、チャップリンの「キッド」に対する偏愛。
ー これらの、彼の拘りが劇中、サラリと描かれ、幾つかの拘りが後半、効果的に使われる。巧い。ー
3.アハロンの性格描写の巧さ
1)完璧主義者
・ウリを施設に入れずに自分で育てるという決意
・デザイナーとして、高い評価を得て居ながら、こだわりが強く過去に、職を放棄してしまっている・・。妻との別居の原因はここら辺にあるのだろう。
・自らの寂しさを、ウリを育てている事で、解消しているように見えてしまう。勿論、アハロンは、ウリを心から愛しているのだが・・。
ー アハロンは、実は”高機能スペクトラム障害”の気があるのではないかな・・。ー
2)自己責任感の強さと、親の我儘
・裁判で、無職故に、”養育不適合”と判断され、施設に連れて行ったウリがパニックになるシーン。そのまま、二人で当てもない旅に出る。
・弟アミールを頼るが、逆に説得され・・。カードも妻タマラに止められて・・。
ー 徐々に、ウリを支えて居るのはアハロンではなく、アハロンがウリに支えられている事が見えてくる・・。ー
<ウリが、施設に再び入所することになり、アハロンが”家に帰ろう・・”と呼びかけた際に、ウリが取った行動。
ウリは、父と旅をする中で、様々な事を学び、成人に一歩近づいたのだ。
ウリのその姿を嬉しさと、寂しさが入り混じった表情で見送る、アハロンの姿。
もう、ウリにはチャップリンは要らないのだ・・。
彼には、アハロンとの二人暮らしでは、経験できなかった、新しい世界が待っているのだ。>
男親として辛い、親として成長を信じたい😚
しみじみしますが
どっちが自立?
親子の成長物語
観終わったあといつまでも続く余韻が素晴らしい。お互い依存しているのではないかと思うシーンが前半に続き、大丈夫なのかこの親子って思わせる。息子は障害者で手のかかるが父親は悪気はないのだがペットのように(本当に悪気ではなく可愛がり)扱い、息子も自分の好きな色も父に聞いて安心する、まともなのは母親や旅先で出会う人たちなのでは。しかし、旅を通して1ミリずつでも成長している二人。性的な事も避けては通れない。
伏線とまでは行かないがちゃんとラストで回収している。
ラストの会話、行動は凄い。
弟はいい人過ぎるよ、泣けてくる。
尺がもう少し長くても良かったのが残念。
いつかは息子は旅立つ…
子離れできないパパの物語
自閉症の息子のために自らの人生を犠牲にして子育てをする父親。
本作では父の息子への溢れんばかりの愛情と息子との強い絆と同時に自閉症の子を持つ親の葛藤や苦労も描かれている。例えば駅のホームで、癇癪を起こし騒ぐ息子を優しくなだめたり、自動ドアの開閉に怖がる息子に一つ一つ向き合い寄り添う父の姿には、同じ子を持つ親としてもう尊敬でしかないとともに、自分も襟を正さなければというような気持ちにさせられる。
子どもは遅かれ早かれ親元を離れて旅立っていく。生物としてこれが正常なこと。
大切に大切に育ててきた子どもを送り出すのには寂しさと時として痛みも伴い、とても勇気のいること。
少し自立することが遅かった息子、成長した息子の姿を送り出す最後の父の表情には泣ける。
それと同時に本作を通して、発達障がいの子どもを育てることの厳しさも描かれており、多くの人が温かい目で見守り、理解することによりもっと世界はよくなるはずだ。
ハートフルストーリー。観た後ホッコリする作品です。
あなたのためはじぶんのため
全33件中、21~33件目を表示