「これは父の巣立ちの物語だと思うんだよな。」旅立つ息子へ バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
これは父の巣立ちの物語だと思うんだよな。
本作、演者さんたちが素晴らしいです。
特にウリ役の方の演技がすごいです。僕は、役者の方ではなく、同症状の方をキャスティングしたのか?と思ったくらいです。この演技あってこその本作かな?って思いました。ほんと素晴らしかったです。
さて、心に染み入る作品でしたね。
みんな一生懸命に親を兄弟を子を思ってるんですよね。歩調や、タイミングや、強さや、やり方が異なるだけ。目的は一緒なのに、もどかしいですね。
愛情あるからこそ、真剣にぷつかっちゃう。
そんな衝突の中ガンガンと突き進んできた父親の「巣立ち」の物語かな?って思いました。
子離れってこととは、微妙に違うかな?って思います。やってることは息子への干渉に見えますよねー。他者に渡したり任せたりするのは信頼できない。自分が最高のサポートをするんだ、、、と。
※以下、ネタバレしてるかもしれませんから、ご注意くださいませ※
父はなぜ仕事を辞めてまで献身的に介護していたのかなー?と疑問に思いました。あくまで僕の推測ですが、
父は息子に凄い負い目を感じてるんじゃないか?と思うのです。愛情以上の負い目を。
電車の向かい側に座った男性の行動に対する眼差しは、世の中の偏見に対する憎しみにも似てます。それは、自身も偏見があるからこそ、他者が同じこと考えていると思っちゃうのではないでしょうかね?
彼はウリのためといっていますが、自身の負い目を払拭したかったのでは?なんて思います。
だからこそ、病があっても何ら周りに迷惑をかけることがないようサポート、介護し不自由を取り除きたいう意識が強かったのではないでしょうか?また、父は一線級のクリエイター、芸術家肌です。息子のサポートも彼にとっては自身の作品のごとく、多くのこだわりの結果であり、故に他者の意見について排斥していたのでは?なんて思います。
ニッチもサッチもいかなくなり遂には逃げてしまう。締め切り間に合わず現実逃避しいなくなる漫画家みたいじゃないですか?
後半の父の感情の爆発=全然気持ちの整理ができてないってこととヒステリーですよね、追い込まれてしまって。
もちろを。ウリへの愛情はあります。ありすぎるくらいに、しかし父にとってウリの生活と言う作品はまだまだ未完成だったのではないでしょうか?
そんな父をウリは感じてたんじゃないかな?だから、尊重してきたんじゃないかな?そんな父に、もう僕は充分完成してるよ。父が120%もとめてるところ、80%でも大丈夫だからと、そっと父の肩をポンポンして背中を押す、そんなラストシーンだったのではないかな?って思います。
もう、充分だよ、負い目なんて感じなくていいんだよ、と父の呪縛を解き放ってあげた、他者を知った成長したウリの姿だったのでは?
そんなとこまて考えるウリは父が大大大好きなんだろなー。
父の巣立ちの物語じゃないかな?
こんな背後の厚みを作ったんじゃないかなー?
旅立つ息子へ、って邦題でいいのかな?なんて、勝手に思ってます。
良作です。