「友情の話と思っていたら苦手な展開だった」アンモナイトの目覚め 北のやまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
友情の話と思っていたら苦手な展開だった
シアーシャ・ローナンが出演しているので鑑賞
一方で主人公のケイト・ウィンスレットはタイタニックのころからやや苦手な俳優
スタートしてすぐに大英博物館に大型鳥類の化石が収蔵されるシーンから。元々のタグには発掘者として主人公の名前が記載されているが、博物館のスタッフにより差し替えられてしまう。
18世紀のイギリスの田舎町。海岸の近くで泥にまみれながら、時には滑落の危険もあるがけによじ登り化石を含む岩石を集める男勝りの主人公。
まだ女性の地位が低く、研究者として認められることもなく、亡き父が営んでいた化石の収集店を引継ぎ、時々やってくる収集家向けに大型化石の発掘とクリーニング、観光客向けには小さな化石を組み合わせたアクセサリー等をつくりながら老いた母と細々と暮らしている。
このお母さんがまた過去がありそうで、気難しく、娘には辛くあたり、さらに何故か8体の動物のフィギュアを入念に磨き続けている。
そんな時に、ロンドンからやってきた収集家から気鬱気味の妻を数週間預かって欲しいとの申し出。なんとも面倒な話なのだが、高額な報酬を提示され嫌々引き受けることとなる。
あまり前情報を入れずに映画を見たいたちで、鑑賞前は女性同士の友情の物語と思っていたのだが、結果的には「燃ゆる女の肖像」と同じく女性同士の秘めた恋愛の物語であった。
正直苦手である(なら観るな、というところだが、気づくのが物語の中盤となるパターン)。
純粋な感想でいくと、なぜ主人公と預かった妻が恋に落ちたのか、(実在の人物をモデルにしているから説明は不要というパターンなのかもしれないが、)結構唐突に、しかもすごく深い女性同士の恋愛に展開した理由が理解しにくかった。
これはお互いに男性優位社会に不満や横圧されている者同士が、妻の夫が不在となったことで開放されたから?とも考えられるが、だからといってそこから同性間で肉体関係を持つほどまで展開するのか?と感じた。
さらに映画のシーン作りだが、関係を持つシーンが結構ハードな描写となっていることにも疑問を感じる。
お互いに知名度の高い女優同士のそのようなシーンを入れれば、どんなに講釈を垂れてみても、どうしても興味本位に扱われるだけだと思われる。そこまでのリスクを承知の上であのような脚本としたのは何故なのか?と感じた。
預かった妻は夫から呼び戻され、主人公の母は突然亡くなってしまう。
葬儀の後、妻からの手紙を受け取り、離ればなれになった二人が、立場を代えてロンドンで再会するが、主人公は妻の申し出を拒み、一人大英博物館に向かう。
そこでかつて自分が発掘した化石の展示ケースを見つけ、中を見ている時に、ケースの向かいに妻がやってくる。対峙する二人。そこで映画は終了。
なぜ主人公は妻の申し出を拒んだのか。主人公は男社会の理不尽さ、トラウマを持つ母からの拘束、人間関係が濃密で精神的な自由を得られない田舎暮らし、それらからひと時逃れる対象としての妻との恋であったことに気がつき、妻からの申し出は再び異なる形での束縛に過ぎずそこからは自由でいたかった、という解釈をした。
ただそうであれば、いずれ時間があれば友情という形で解決できるかもしれない。ラストシーンはその余地を残したということかもしれない。
世界には男性と女性しかいないのに、なぜか女性には不遇な社会が続き、もう一方の当事者である男性は本質的な問題に気づかない、気づく能力が無いということなのだろう。