「セルゲイ・ポルーニンだからこそ成り立つ映画でした」シンプルな情熱 laperla616さんの映画レビュー(感想・評価)
セルゲイ・ポルーニンだからこそ成り立つ映画でした
ロシアの外交官アレクサンドル役をセルゲイ・ポルーニンが演じると聞いただけで観たかった映画です。
セルゲイ・ポルーニンは英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに選ばれ、全身にタトゥを纏う異端のバレエダンサーで、バレエダンサーとしての才能と圧倒的な存在感は文句なしのスターですが、彼を知らない人にとっては無名のミステリアスな俳優にそこまでの色気と魅力を感じないのも致し方ないのかもしれません。
おそらくフランス語もロシア語もままならない彼に、フランス映画によくある、しゃべり倒すようなセリフは難しいかもしれない。だからこそそんなセリフは必要ない。
地位も名誉もあり、シングルながら愛する息子や気の合う女友達がいる主人公エレーヌ。
生活は充実して特段不満も無いような彼女だからこそ、ただひたすらに愛を求めることができたのかもしれない。
彼と会えると分かった瞬間、丁寧にメイクし、セクシーな下着を身につけ、何を着ようかあれこれ考えるのは、恋をしている女性なら誰でもすることで、きっと観ている女性は自分と重ね合わせたはず。
ただし相手はセルゲイ・ポルーニン演じる魅力的なアレクサンドル。もっと彼のことが知りたい、彼を独り占めしたい、と、いつしか2人の間に成り立つバランスを崩してしまう。
愛する息子や仕事を犠牲にしてまで堕ちていったエレーヌでしたが、最後にアレクサンドルと会って今までの2人とは違っていると感じ、自らこの愛に終止符が打てたことこそエレーヌが知的で自立した女性だった証です。
ホテルで彼の姿を追いながらも、ここまでと踵をかえしてホテルを去るシーンでかかる「Only you」。
歌詞と映画のシーン、これからのエレーヌがイメージされて絶妙でした。