「美しさあり、醜さあり、終始溜め息」シンプルな情熱 shi-naさんの映画レビュー(感想・評価)
美しさあり、醜さあり、終始溜め息
不倫の恋に溺れるシングルマザーが主人公です。
不倫の恋といっても、相手の男性には主人公への愛情や関心がほぼありません。
Passion simple(邦題 シンプルな情熱)という映画の作品タイトルのまま、シンプルです。
言い方を変えれば、〝そのこと〟ばかりです。
情事にひたすら溺れる男女。
性描写が多めの作品です。
主人公・エレーヌは、愛息との生活よりも年下の既婚男性との時間を待ち焦がれる日々。
母であることよりも女を優先します。
エレーヌに好意を寄せられる既婚者アレクサンドル。
容姿は申し分ないが、人でなし。
四六時中アレクサンドルを想い、彼都合での電話しか許されなくても、ただひたすらに連絡を待ち、急な連絡からの情事を重ねるというシチュエーションが序盤から終盤まで幾度も続きます。
エレーヌが彼に惹かれた理由などの描写があれば…少しの感情移入もできたかもしれませんが。
溜め息しか出ない。
不倫をテーマにした映画は多いですが、ある意味、初体験のジャンルでした。
中盤から、これはホラーではないかと…。
エレーヌが彼の名前をネット検索して、アレクサンドルの顔画像を見てるときに息子に見られてしまいます。
慌てふためくエレーヌですが、息子が去った後も再び画像を見て、拡大してアレクサンドルの口元に手を当てたときには、息子が居る家でよくできるな…と、気持ち悪さしかないシーンでした。
その結果、息子を学校に送ったときには、後ろにまだ息子が居ることを知らずに轢いてしまいそうになります。
女を優先した果てがこれかと、アレクサンドルよりもエレーヌへの怒りが上回りました。
不倫映画にただドキドキしたいママさんにはおすすめできません。
しかし、フランス・ベルギー合作の映画ですので、キャスト,衣装,街並み,食器類など全てがお洒落です。
個人的には、エレーヌ役のレティシア・ドッシュは、美人すぎてこの役は合っていない。
派手さのない地味な顔立ちの女優さんの方が凋落ぶりが目立っただろうし、作品としてのエロティシズムも際立ったことだろう。
美肌でスタイル抜群の女優さんでもあるので、アレクサンドル役のセルゲイ・ポルーニンと共に存在そのものが芸術でしかなく、不倫というテーマを超えてうっとりすらしてしまう。
結末は予想通りでもありましたが、女性に危うさがある状態のままなので、アレクサンドルとの関係が終わっても、こういう女性はまた同じタイプの人を引き寄せてしまうのだろう。
だとしたら、不倫とは精神崩壊というホラーでしかない。
エレーヌに警告を発していたのは、
友人よりも、自分自身よりも、美容室で隣り合わせた女性客だったのかも知れない…。
全然すっきりとせず、脱力感で映画館を後にしました。
フランス映画は、最近だと『MISS ミス・フランスになりたい!』はよかったです。