「同じ監督作なのに、ADVがSTGになったぐらい別物」新感染半島 ファイナル・ステージ よんしんさんの映画レビュー(感想・評価)
同じ監督作なのに、ADVがSTGになったぐらい別物
邦題は「新感染半島 ファイナル・ステージ」ですが、原題は「반도(半島)」。今回はポストアポカリプスになった韓国への潜入からの脱出のお話。映画ファンなら「ニューヨーク1997」かよ!と思うかも。アドベンチャーゲームの続編がシューティングゲームになったってくらい全く違うテイストですが、前作「新感染 ファイナル・エクスプレス」(原題:부산행(釜山行き))と同じ監督&脚本なんですよねえ。
ゾンビ映画というと、シリアスなものが多いですが、今作はわりと明るいテイスト。それも前作のような作品を期待している人は面食らうでしょうね。
さて、ゾンビ好きの人はゾンビ作品を見るとき、まずは、今回のゾンビはどんなタイプなのか?と検討をつけると思います。
かつては呪いでゾンビになったのが、「バイオハザード」あたりからウィルス路線が定番になり、「ウォーキングデッド」あたりから結局怖いのは人間だよね、となり、「ワールド・ウォー・Z」あたりから、とんでもないスピードで走ったりジャンプするゾンビが現れてきました。音に敏感で、ヘッドショットで一発というのが最近のゾンビのお約束のようです。
前作「新感染 ファイナル・エクスプレス」では、ゾンビ化したら真っ先に首を狙うようになり、首をかまれた人間は5~10秒ぐらいでゾンビ化し、すごいスピードで人を襲うようになります。手をかまれた場合はゾンビ化までに数分かかるようでした。また、知能は低く、暗いと何も見えなくなるようでした。
本作のゾンビも基本は同じ設定ですが、演出のためなんでしょうが、冒頭でゾンビ化までにけっこう猶予があったのと、前作では一体も倒せなかったゾンビが、銃で簡単に倒せるようになってたのがちょっと腑に落ちませんでした。
韓国へ潜入する目的が、ドルが詰まったトラックを探して一攫千金を狙うというものですが、韓国から脱出するために金が必要というのが面白いです。
韓国は1997年の通貨危機により、国家が滅ぶ危機に陥りました。その後、長く不景気が続き2000年代初頭には多くの国民が韓国を抜け出すという大移民ブームがありました。当時の多くの韓国の親たちは、こんな国で子供を育てたくない、金さえあれば自分の子供だけでも海外移住させたいと考えていました。その後、韓国経済が回復し韓国を脱出しなくてもステータスが得られるようになり、やっぱり韓国がいいじゃないか、という雰囲気になりました。
…という背景を意図して作られたかわかりませんが、1997から始まり、地獄のような韓国を脱出するために金が必要、という構図がぴったり当てはまるのがなかなか面白かったです。
監督のヨン・サンホ監督はもともとアニメ監督で、今作もいろいろな作品の影響を受けているとか。終末モノのアクション映画に振り切った作品なので、人によっては受け入れられないかもしれませんが、個人的には前作よりも楽しかったです。