「エンディングが好み」アナザーラウンド まままさんの映画レビュー(感想・評価)
エンディングが好み
キルケゴール
「青春とは夢である。愛とは夢の中である」
「失敗したあと自分の不完全さを認めること。他者を愛するために」
重要なところでキルケゴールを持ち出してくるのだから多分その思想をもとにしてるんだろうがキルケゴールに関してはごく表面的なことしか知らないので残念。
全体の話としては、何か乗り切れない感じ。
まず最初。
人生に虚しさを抱える中年男性。気力は湧かないし、教師の仕事も退屈、妻ともうまくいかない(実は妻は浮気していた)。
そんなときにアルコール0.05%の話が出現。
なんだかんだ上手く歯車が回り出す。
この始まり方の時点で、
①イエスマンやプラダを着た悪魔、黒澤明の生きるのように、「生活を変えてみたら世界がガラリと変わり出した→だけどそれは一時的なもので本質的な問題が現れ落ち込む→最後はもとの生活に戻りながらも温かく前向きな考えに至る」というパターン
②ダーレンアロノフスキー作品のような、「中毒や執着がエスカレートしていき、膨らんだ風船が破裂するようにして破滅して虚しく終わる」パターン
のどちらかだろうかなんて考えながら見ることになる。
すると徐々にアルコール濃度が上がっていく(LUCYみたいと思った。そういえばあれもドラッグものだった)
話の構造はコメディでもいいくらいの単純でお馬鹿な話なのに、雰囲気はだいぶとシリアスに進んでいく。
形だけの実験形式な文書はぶっちゃけなくて良かった。シリアスさに水を刺すくらい陳腐だった。
最後まで見てみると
一人は②のパターン、その破滅を契機に残りの3人は①のパターンに至る。
ふーんという感じで終わろうとしたら、、、エンディングはかなりいい!
これだけ描いたけれどやはりアルコールは必要!人生は美しい!人生は不安いっぱい悲しいこといっぱい、人間には不完全なこといっぱい!それでもなんとか楽しく生きていかなくてはいけない!
男の寂しい人生を受け入れるようなそんな絶妙な意志を感じる、マッツミケルセンのダンスと、それを飾る音楽。
うーんもう一度この映画見るかと聞かれれば微妙だが、最後のシーンは何度でも見れる。