「少女の夢を彼女が叶えるまで。馬と一緒に。」ライド・ライク・ア・ガール meiさんの映画レビュー(感想・評価)
少女の夢を彼女が叶えるまで。馬と一緒に。
さほど珍しくもない構成なのは最初にわかる。
何やら想いを込めた貴重なレースがいよいよ始まる。
画面いっぱいの強い眼差しの女性騎手の顔。
亡くなったことを悟らせる近親者への言葉。
いざ!勝負!
で、生い立ちを追うストーリーが始まるのだが。
私自身、馬は触ったこともなく、馬券も買いませんが。
愛犬を家族に迎えて以来、動物に滅法弱くなりまして。
最初の数分で心持ってかれました。
女性騎手の真剣な眼差しと同じ強さで、
馬の描写。
耳から始まるんです。
敏感に聞き取る(きっと気配も感じる)ピンと張った耳。
自分の周りの世界を見通す艶々の瞳。
そして、芝の匂いや他の馬の臭いも嗅ぎ取る鼻。
めちゃくちゃ可愛い。
演出としてはここはかっこいい方が適切?
レースへの気合いを人馬一体となって表現させているのかな。
でも、私には可愛いという感情がブワッと湧いて来ました。
女性騎手の偉業を伝える映画としては、ここは彼女のアップと、言葉、レースの盛り上がりを伝えれば十分なはず。なんならいかにも走りそうな強そうな馬体を写せばいい。
そのシーンで
お馬さんの愛くるしさを感じさせる部位を見せる。
どういうこと?
監督さん、馬が好きなんですよね、きっと。
ま、そうでなきゃこれ作らないか。
この3カットにキュルッとした私は
(MIU404見てます。綾野剛くん好き)
あ、この映画見て良かった。と、もう満足。
あとはチラシで見た通りの苦難と克服を経て、最初のシーンへと戻る。
あ!
そうかまたあの可愛いお耳が見れるのね。
やっぱり可愛いわぁ、と、満足。
途中、落馬した彼女をじっと見つめる瞳のズームや、浜辺で波と戯れる姿の遠景など、馬の描写にはそのたびにキュルッとなって心配したり安心したり。
実話をただ再現しているのではなく、(当たり前でしょうが)映像として、観ている者の心を動かす作品でした。馬の描写だけでも。
男の社会で女性が道を拓くのは至難の技。
いろんな業種で「女性初の」人はみな、偉業でしょう。
それを自らは偉業です、なんて言わない。
だって、好きなんだもの。やりたいんだもの。
気持ちありき。
だから、そのために出来ることを全てやってきた。
ただそれだけ。
なんて、さらりと笑って言う彼女のなんて幸せそうなこと。
再度、満足。
いい映画でした。
ドキュメンタリーじゃない。
ところで
私はお父さん役のサム・ニールさんを見ると
志垣太郎さんを思い出す。