「自分が好きなことでは負けたくない…とても気持ちのいい映画」ライド・ライク・ア・ガール グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
自分が好きなことでは負けたくない…とても気持ちのいい映画
〝実話に基づく話〟ではなく、〝実話〟なんですね。
だから、少女時代からの時間の経過に追われて、リハビリ期間中の様子などの描写も割とスーッと進んでしまいます。男性優位社会で必然的に起こる様々な軋轢の描写も然り。
そういう展開なので、過度な思い入れによって引き起こされる男性優位社会への憤りとかもさほど感じないし、闘病生活への応援の気持ちも、観ているこちらまで歯を食いしばるほど、ということもありません。
競馬のこともメルボルンカップの凄さのことについても何も知らない私にとっては、ずいぶんアッサリ偉業を達成したんだな、そんな感じでした。
でも、もしかしたら、客観的にもの凄いことを成し遂げた人の気分って意外とアッサリしているというのも本当のような気もします。
〝自分が好きなことで負けたくない〟
その気持ちを持ち続けている本人にとっては、リハビリも練習も、その努力も、やらなければ負けてしまうから続けるし、気がついたら、他の人よりも多くの結果が残っていた。その程度のこと、ということがあるのかもしれません。
だから、あのレースの後のインタビューで、男どもの鼻を明かすことができたのは気持ち良かったですね、というちょっと軽いノリの発言に聞こえるのは、照れ隠しでもあり、本音でもあるし、少なくとも、すべてはこの偉業を達成するための努力の積み重ねの結果です、なんて自分を讃えるようなことは露とも思ってなかったと思います。
イチローさんや大坂なおみさんへのインタビューなどを見ていても、前からそんな感じを受けることがありました。
日本のテレビ関係の人たちは、どうしても、努力とか凄さについて、本人に言わせようとしたがります。野球中継のヒーローインタビューなど見ていて、〝選手の気持ちとインタビュアーの質問が噛み合っていない感じ〟をよく受けるのも、そこいらあたりに原因があるのではないでしょうか。
そういうわけで、この映画は選手や家族の思いへの寄り添い方とか距離感においての〝ぎこちなさ〟を感じることがほとんどなくて、とても気持ちの良い作品でした。