劇場公開日 2021年5月21日

「終末期医療に一石を投じる作品。」いのちの停車場 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5終末期医療に一石を投じる作品。

2022年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年。監督:成島出。原作は現役医師の南杏子。
吉永小百合主演の医療ドラマです。
課題も山積みですが、とても考えさせられました。
これだけ高齢化が進む日本の現状です。
病院で死ぬか?
家で死ぬか?
現実は待ったなしです。

長年に亘り救命緊急医だった白石佐和子(吉永小百合)は、あるキッカケで、
父親(田中泯)の住む金沢に戻ります。
そして金沢で在宅医療医院「まほろば診療所」で医師としての再スタートをきることに。

在宅医療を行う「まほろば診療所」のスタッフ役の松坂桃李がとても良かったです。
医師免許に何回も失敗してる設定なのですが、彼の演ずる野呂くんが、
とても好きになりました。
(松坂桃李は普通の青年をこんなに自然に演じられるんですね)
野呂くんと小児がんの少女・萌(佐々木みゆ)との交流は良かった・・・
萌ちゃんがお父さんに言う「小児がんの子供でごめんなさい」
この言葉には泣かずにいられませんでした。
(野呂くん、本当に優しい。)

最後まで観ると、吉永の父親役の田中泯・・・これはもう入魂の演技で、言葉が出ないくらい素晴らしいです。

診療所日記・・そう言ってもいい程、患者さんが通り過ぎて行きます。
それも死期の近い患者さんが・・・
エピソードそれぞれがあまりに短いし、掘り下げが足りない。
伊勢谷友介、石田ゆり子、柳葉敏郎、小池栄子、といい役者が揃ってます。
みなさん、出演場面が少なく花を添えた程度でした。
特に伊勢谷友介のエピソードは尻切れトンボになり、ここは演出も苦しかったようです。

看護師として「まほろば医院」で働く広瀬すず。
彼女も辛い過去を抱えて生きてます。
自然な演技と可愛らしさ、やはり魅力的です。
西田敏行は安定です。やはりいい、好きです。

肝心の吉永小百合さん。
言いたいことはいっぱいあるけれど、76歳でまだ主演すること、
需要があるのは凄いことですね。

人間の終末期医療のあり方を考える問題提起の役割は果たしたと思います。
人間模様は、多くの人が経験すること、共感を持ちました。
「安楽死」
これは難しくて、どのように描いても描ききれない・・・
コロナ禍で「命の選別」が図らずも浮かび上がりました。
もう少し時間をかけて時期が来れば「安楽死」も進展するかも知れませんね。

「死」と向き合い「死」考えるキッカケとなる問題作だと思います。

琥珀糖