劇場公開日 2021年5月21日

「命と向き合い、命に寄り添う医師達」いのちの停車場 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0命と向き合い、命に寄り添う医師達

2022年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は吉永小百合主演作であり、末期患者の在宅医療という極めて今日的な問題に真正面から迫ったヒューマンドラマである。真摯に命と向き合い、優しく命に寄り添う医師達の姿は感動的である。コロナ禍の今、奮闘している医療従事者の方々の姿と重なり、非常にリアルに感じられた。

本作の主人公は、大学病院の救急救命医・白石咲和子(吉永小百合)。彼女はある事件で退職し、父・達郎(田中泯)が暮らす金沢の実家に戻り、まほろば診療所に再就職し在宅医療に携わることになる。当初は、救急救命との違いに困惑していたが、次第に在宅医療の大切さを知り、院長・仙川徹(西田敏行)、看護師・星野麻世(広瀬すず)、大学病院を辞め主人公についてきた野呂聖二(松坂桃李)らとともに、末期患者の在宅医療に懸命に取り組んでいく・・・。

吉永小百合も76歳であり、冒頭シーンでは年齢を感じさせる所作もあったが、さすがに肝心な場面では、毅然とした台詞、凛とした佇まいが際立っていた。作品を上手に牽引していた。やはり彼女には映画が似合う。映画スターという名前が相応しい。

際立ってはいるが、吉永小百合のワンマンショーになっていないのは、脇を固める俳優陣がそれぞれの演技力で存在感を示しているからである。父親役の田中泯の鬼気迫る演技。末期患者役の石田まり子の苦悩を内に秘めながら淡々と語る演技。特に、松坂桃李、広瀬すずは、気負いがなく、自然体の、のびのびとした演技で、吉永小百合やベテラン俳優達とは違うストレートで若々しい感性で未来と希望を作品に与えている。

物語は、様々な末期患者のエピソードを描いていく。安楽死問題にも迫っていく。どのエピソードも悲しく切ないが、観終わって暗い気持にはならない。熱いものが込み上げてくる。

どのエピソードでも、主人公達は、真摯に命と向き合い、優しく命に寄り添っているからである。主人公達が命を愛おしんでいることが画面から切々と伝わってくるからである。

みかずき