「吉永先生の治療を受けたい。」いのちの停車場 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
吉永先生の治療を受けたい。
医者は患者を直して元気にするのが本来の仕事だから、直せない患者にどう向き合えばいいのだろう。救急救命医から在宅医療の「まほろば診療所」に来た咲和子先生の最初のとまどいもそこにある。無責任な外野席から見ればそこには「無力感」しかないように思えるが、「まほろば診療所」は違った。「いのち」と「死」に真剣に向き合うことで大切なものが見えてくる。咲和子先生の経験と成長に合わせて、作品を見る者も見方が徐々に改まっていくのを感じる。
その大きなポイントは、人は死ぬ瞬間が幸せなら、それまでの人生でどれだけ不幸があっても本人は幸せであるという事だ。それをいろいろな形で見せてくれた。その幸せを実現するお手伝いができるのが「まほろば診療所」であり、メンバー4人がうまい具合にチームとして機能している。医者の鑑のような咲和子先生を若い麻世さんと野呂くんが支え、彼らを院長の仙川が大きな愛情で包み込む関係ができている。吉永小百合の医師も素敵であるが、広瀬すずと松坂桃李という演技派若手俳優を据えたことで作品の真実味が増したように感じる。
最後は「安楽死」というテーマに踏み込んでいるように見えるが、結論を示してはいない。金沢の美しい朝の情景に寄せて、改めて「いのち」とは何なのかという永遠の問いを考えさせてくれた。
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