「すごい……(末尾に、最近の心境もあり)」ヤクザと家族 The Family CBさんの映画レビュー(感想・評価)
すごい……(末尾に、最近の心境もあり)
ひとりの男の人生を追うことで、現在のヤクザとその家族を取り囲む過酷な状況を伝える映画。
すごいなあ、こんな黄昏れたやくざ映画って、撮れるんだ・・・
1999年から始まり、2005年(6年後)を経由して、2019年(14年後)で幕となる。
それぞれ、① ヤクザになるきっかけ、② 刑務所に入ることになる原因、③ 刑務所を出てからの生活。
前半は、各シーンを黒っぽくそして青っぽく撮っている。これが、前半のバイオレンスでソリッドなストーリーにぴったりあてはまる。
一転、後半は、各シーンをくすんだ白熱灯のような色で撮っている。この対比は、もう見事としか言えない。
ヤクザを囲む過酷な状況が悪いとか可哀想とか思うことは、俺にも、ない。彼らは反社会的勢力なのだから。
そして作中でも言われるように、「世の中全部が、ヤクザを排除するようになっている」 のだから。
ただ、"ちょうどその時期にあたったひとりのヤクザ" の人間としての悲劇は知っておくべきだし、さらに、ヤクザの家族に対して俺たちはどう対応するべきなのか、いろいろなことを考えさせられる映画だ。ここは、詳しく書くよりも観てほしい・・かな。
ラストシーンは俺にめちゃくちゃ響いたなあ。この話に、こういう終わらせ方があったのか!? 凄い!!!
おまけ
綾野さん、小野さん、上手い。まあ、ふたりが上手いのは今さら言うまでもないことだが、特に小野さんは、こういう役に絶対的な強さをもっている気がする。はまり役というか。
そして舘さんの前半後半の変化は、みんな是非観た方がいいですよ。これも見事と思う。前半と後半で2本の映画だと思えば、136分という時間も短いとわかります。
へええ。藤井監督って、「新聞記者」で「宇宙でいちばんあかるい屋根」で、そして本作なんだね。この幅広さって、すごいね。おお、隠れた名作「青の帰り道」も藤井監督なのか。今泉監督のように "俺とウマがあう" わけじゃないけれど、注目してるべき監督であることは、間違いないなあ。
2021/4/1 追記
ある解説で読みました。抜粋して引用しておきます。
『あゝ、荒野』、『宮本から君へ』、『MOTHER マザー』。いま日本で最もアブないテーマに果敢に取り込む制作会社スターサンズ。
… たしかに。どれも、諸手を挙げて好評されることはない、クセの強い映画ばかりだ。今後も注目しておこっと。
2021/6/6 追記
友人の感想が、けっこう心に響いたので、書き記しておく。と共に、評価点を3.5に下げた。
---- ここから、友人の感想 ----
タイトルになっている家族への愛。組長への愛、妻娘への愛、いずれも描写が薄くない? 優しくされたから、組長を親父と慕ったのだろうが、あまりにもあっさりした描写だけ。それはまだ許すとしても、後半。主人公は、言われたからといえ、大した葛藤の描写もないままに、組を辞める。妻娘が主人公に寄せる心も、観ているこちらが少しでも納得するような描写がない。特に娘の心は、謎。娘からみたら、"ただ災厄を運んで来た男" でしかないのに、ここも葛藤する娘という描写もないまま、「実の父親だから」という理由だけで、海に花束持って来たのか? どうしてそうなった? と疑問符が付くことばかり。主人公を、よい方に描き過ぎてるんだと思う。妻娘のエピソードは、ない方がまだましだったろう。
密漁する幹部二人も、既に、若頭が覚醒剤やってるんだから、そんなことする必要ない。
なんというか、説明不足のエピソードが、あちらこちらにとっちらかってる感じ。
---- ここまで、友人の感想 ----
上記の感想は、いずれも言われてみると、その通りだと感じる。ヤクザという許されない存在を、ひとりの人間と見ることが、この映画の主眼だろうが、そこに生じる矛盾は解決できないので、上で言われているように、"後半は、エピソードの羅列だけに終始し、少しでも納得感を呼び起こすような工夫は、行われていない" ってことなのだろうな。
観ていた勢いで、最初のレビューを書いたわけだが、今は、ちょっと、反省してます。それほど、出来がよいわけでは、なかったのかも知れない。
CBさん、お邪魔します。
光の色合いの違い、全く気付いていませんでした。
(話の展開が気になって、それどころでは無かった気が…)
Net配信で見られるようになったら
そういう点も気にしながら観なければ、ですね。
今晩は
コメント頂き、有難うございます。素直に嬉しいです。
”『あゝ、荒野』、『宮本から君へ』、『MOTHER マザー』。いま日本で最もアブないテーマに果敢に取り込む制作会社スターサンズ。”
『あゝ、荒野』は観ていないのですが”N・・”で鑑賞予定です・・。
『MOTHER マザー』が、脚光を浴びたのは、重いテーマに果敢に取り組んだ作品であったので、嬉しかったです。
個人的にはエレカシのファンなので、『宮本から君へ』ももっと、脚光を浴びて欲しかったかなあと思うNOBUです。
では、又。返信不要です。