「裏社会は形を変えて生き続ける。」ヤクザと家族 The Family ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
裏社会は形を変えて生き続ける。
ヤクザのリアルを描いたという点では評価できる。いろいろなタイプのヤクザを見せられると、普段関りがないだけに、あーこういうものかと納得する。若頭の中村が「男を磨く」と言っているが、真っ当な(?)ヤクザはそんな気概をもって稼業を続けているのだろう。中でも綾野剛の演技は鬼気迫るものがある。少年時代の行き場を失ったチンピラから、バリバリの本格的なヤクザになり、刑期を終えて状況の変化に迷い悩む姿まで、見事に演じ分けている。ヤクザの盛衰と共に、彼の姿を心に刻むだけで、この映画を見た価値はあるかもしれない。
作品の内容はというと、共感できる所がほとんどなかったのは残念だ。「家族」というテーマに沿って物語は分かりやすく進行していくが、テーマの深堀りが決定的に足りない。家族とはこういうもんでしょうという、誰もが抱く一般的な先入観から話を組み立てているように思う。映画を見るうえで一番大切なものは「発見」や「気づき」であると思っているが、テーマの深堀りが欠けているため「発見」の乏しい作品になってしまった。この点は藤井監督の「新聞記者」にも同様な感想を持ったため、レヴューに書いた記憶がある。
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