「もっとハッキリと色付けすれば名作になったはず」哀愁しんでれら バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとハッキリと色付けすれば名作になったはず
「シンデレラ」の話の不気味なところを物語として成り立たせているストーリーは面白いです。ちょっとしか知り合っていない人(踊っただけ)と結婚した夫婦の顛末。面白いですよ、アプローチは。
テンポの良いホームコメディタッチの序盤からは想像し難い結末で、なかなかの見応えあり作品でした。ストーリーの展開としては明確な起伏があり良しでした。ただ、ただですね。
本作は作品としての色付けをどうした方のかなぁ?という点がよくわからなくってその点が残念ポイントでした。なので、ライトサイド・パートとダークサイド・パートの時間配分もあまりよくないなぁと。ライトサイドの尺を取りすぎてる気がします。(好みの問題かな?)
テーマは興味深いです。
「親をする」と「親になる」の違いは何だろう?ってこと、また、「親になる」とはなんなのだろう?ってこと・・・だと思います。もしかしたら子育てしたことのある方は、すっごく共感できるのでしょうかね?
子供を信じる、見極めるってどれだけ大変なんだろって思います。
そのテーマをヒューマンドラマとして描きたかったのか?それとも変わっていく人間の怖さをホラーっぽく描きたかったのか?そこがぼんやりしてるんですよね。
だから作品としての突き抜けていない感じを受けます。
コハルが本作のキーなんだけど、彼女の葛藤と動機の描き方がどうも薄いんですよね。
結婚前のコハルが歩んでいく道のその根拠が・・・どうにも丁寧さに欠ける気がします。
人間の内面変化の怖さなのか?
親になりきれなかった大人な哀しさなのか?
単なるストレスフルな状況からの逃げなのか?
選ばざるを得なかったのか?(帰るとこないしなーってレベルの葛藤じゃぁないはず)
動機描写薄いから、ストレスフルになって考えることを辞めた人にしか見えないんですよね。
はっきりしないんだよなぁ。土屋さんの顔面から表情が消えたなぁ・・・ってくらいで。
僕としては、壊れていくコハルが見たかった。ダークサイドに引き寄せられていく、または無意識にダークサイドに落ちていく様を背筋を凍らせながら観たかったです。内面がぐちゃぐちゃになっていく様が観たかったです。
それと、ラストですが、すみませんが勘がよければどうなるかバレバレです。いや、手にとるようにわかっちゃいました。なんであんなにわかりやすくしたんだろう?ヒント出し過ぎ。それに、現実感ないし。あんなに仕入れたらおかしいって!
それと、ラストはミッドサマーのような「救いようの無い最悪の幸せ感」を出してほしかった。
とにかく異常度が欲しかった、この見る側が変われば薄気味悪い夫婦の。
色付けが明確じゃない本作から受ける印象は「モンスターペアレント製造過程映画」です。
残念ながら。
あーーーぁ、もったいない。
すごく面白くなりそうなのに。ストーリーは面白いんです、ストーリーは。味付けです。問題は。