「イカれたイヤミスがデビュー作、監督の凄さと展開に圧巻の一言」哀愁しんでれら たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
イカれたイヤミスがデビュー作、監督の凄さと展開に圧巻の一言
今月の暫定ベスト。新鋭監督とは思えないほどドシッ構えられた構図から、おとぎ話のその先を大胆不敵に綴る様は圧巻の一言。
一夜にしてありとあらゆる悲劇を被ったしんでれらが助けたのは、王子様…のような金持ち。あらゆる悩みを金で解決する王子様によって幸せになったしんでれら。めでたし、めでたし…。で、終わると思ってるの?と嘲笑するように、物語は散らかしてゆく。母からの愛を知らない二人は、愛の形を求めて暴走していく。娘も生意気でよく分からないガキ。なぜそうなったのかは見えにくいのだが、気持ち悪いほど、とっ散らかしてくれる。その中でも、格差と皮肉が痛烈に効いたラストへの助走だったと思うとなおさら恐ろしい。それほどの異端な世界を3人で走っていく。それも、あたかも正義のように。よく中島哲也監督と比べる感想を見るが、これは非なると思う。道を踏み外した自覚すらない清らかな世界を、疑いもなく踊っているからだ。そこに間違いを感じさせないほど不可侵な領域へ持っていっているのが、最高に気持ち悪くて、気持ち良い。
ここまでイカれたイヤミスを観たのは久しぶりかも。デビュー作にしては出来が良すぎる。こんなレールを自ら敷き、ド派手に落とす監督の凄さったら。次回作を期待出来ないわけがない。オススメ出来ないほど面白い胸糞の悪さが、何よりの余韻だ。
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