「途中までは良いが…」哀愁しんでれら サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
途中までは良いが…
失恋に失職、火事による家の消失を経て失意のどん底に落ちた女性が、妻を亡くした金持ち医者と結婚してとんとん拍子に幸せをつかむ話…と思いきや、家庭に入ってからどす黒い暗雲が立ち込める。
簡単にまとめると、前半は単なる幸せ家族物語。中盤はエスターを思わせるしっとりとした狂気渦巻く家庭のお話。で、終盤でファンタジーと成る。
幸せ家族物語は良し。何から何まで幸せ尽くしでいい感じ。それを下敷きにした不穏な家族物語もまた良し。もちろんそれらが生む落差による転落劇も良いのだが、「家族」になったことで見えてくる相手や自分の悪徳が露になるところも良かった。
特に、自分がなりたくなかった人間になってしまった悲しみは転落劇のオチとして最高だったと思う。オチとしては。そしてこれがオチであれば。
というのも、これを転落劇のオチとして使うにしては家族の性格が悪すぎる。自分なりにベストを尽くしているのにすれ違いでうまくいかなかった…という展開であった方が納得がいった。
まずはこじれた完璧主義者の夫。幸せパートから不穏パートになってからの落差が大きすぎて、ちょっと飲み込みづらかった。「そして父になる」くらいの塩梅であればすんなり受け入れられたのだが。次にエスターじみた娘。こちらはもう滅茶苦茶で、エスターじみたというかエスターだろという感想しか出てこない。とにかく主人公を不幸にさせるためだけの行動ばかりとるが、目的も思考もさっぱりわからなかったからだ。
そして物語のオチの意味不明具合。脚本家がどうにか締めるために匙を投げたのかと思った。狂っている人間は狂ったことをする、以外に行動に妥当性を持たせられるのか。娘のため、だけであんなことをするほど狂気におぼれた人間であるようには見えなかったのだが。