「長くてすみません。でも」哀愁しんでれら haruichiさんの映画レビュー(感想・評価)
長くてすみません。でも
観終わって、ラストシーンでの大悟の抑揚のないAIみたいな声が耳に残った。 大角膜あたりに溜まった何かを吐き出したい欲求は、日に日に強くなった。
ふと、息子が小さい頃「ダンサーインザダーク」を観て夜中に号泣したことを思い出した。
担任は全く親身になってくれなかった。 彼女はもっと解りやすい障害を持つ生徒のためのカリキュラムで手柄をあげることに集中していて、〔授業中好きな本を読んでも良い〕というその生徒の特別ルールに対して、「不公平だ!」と空気を読まずに文句を言う息子に心底イラついていて、面談のときに私に不満を言った。 「先生は教えるのがしごとだろっ!てそんなことも言うんですよ!」とか…それは、私が息子に言った言葉です。 解らない解らない解らないとパニックになってわめく息子の頬を叩いて、「解らないところは先生に教えてもらって!先生は教えるのが仕事なんだから!」と。 泣き叫ぶ声が更に私をパニックにした。
家に帰って、10年以上前のそんな断片が浮かんできたりして、また、大悟のAIみたいな声を思ったとき、腑に落ちた。
そうか、洗脳されたのは大悟の方だった。
最初は、小春が究極の選択をしたのは大悟からのマインドコントロールによってかと思ったりもしたけれど、どうも違和感があった。
もともと愛情深く母性が強い小春は、「もうどうしたらいいのかわからない」と怯える大悟の姿にショックを受けただろう。 あんなに冷静で的確で、ヒカリを守るために常に心を配り行動してきた彼は今、背中を丸めて怯え切っている。 私が彼を守らなくては。 ヒカリを守ることは大悟を守ること。 二人を傷つけ、悲しませ、怯えさせる、全てのものから私は守る。
そうして母性が暴走した。
小春の口から究極の選択を聞かされた大悟は、恐ろしさのあまり小春に抱きつき、それは出来ないと言っただろう。そんな恐ろしいことをやれるはずがない。 しかし、小春は穏やかに諭す。 ヒカリを助けるためにはそうするしかないのよと。 大丈夫、私が二人を守るからと。
それは大悟にとっての理想の母親の声だったのかもしれない。
唯一の目撃者であるだろうメガネの女の子からの手紙は、微かな光ではあっても、もう少し早く大悟と小春の手に届いていれば・・・と悲しく思った。
いろんな立場、いろんな境遇の幅広い世代に観てほしい。じわじわと評判が広まってロングランになればいいのに。
圭さんのクランプアップコメント映像を観たとき、 「うん、ちょっと何言ってるかわかんない。」と思ったけど、映画を観終わって再度見たら、頷きまくった。 つくづくナチュラルに正直な人だなぁ