「多彩なカメラワークと異様な旋律で描くシリアルキラーの不安」アングスト 不安 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
多彩なカメラワークと異様な旋律で描くシリアルキラーの不安
この手のホラー映画は、被害者側からの恐怖を描く事が多い。しかし本作は、主人公でありシリアルキラーを主観におき、彼が狂気に走るのかをじっくりと捉えた、犯罪検証VTRの意味合いが強い。
ステディカムやズームによる極端な接写ショットや、クレーンでの高所からの俯瞰ショットといったカメラワークを多用しつつ、さらに耳なじみの悪い旋律の音楽が、観る者のアングスト(不安)を煽る。
ミヒャエル・ハネケやギャスパー・ノエが作品づくりの影響を受けたそうだが、確かにハネケの『ファニー・ゲーム』やノエの『カルネ』を思わせるシーンがあった。ただ、そうした観客を嫌な気分にさせる演出には、以前からあざとさを感じていた。
かたや本作からそれを感じないのは、シリアルキラーが持つ殺人欲求への“純真”さが、突き抜けて怖いからといえる。だからこそ、この監督は「危険すぎる」とみなされ、次の商業用映画を撮れなくなったのかもしれない。
逆に言えばハネケやノエは、うまく映画界で立ち回れているからこそ、毎回センセーショナルな作品を発表できるのだろう。
不快指数120%なので観る人を選ぶのは確実だが、一つ言えるのはワンちゃんが癒しキャラ。
コメントする