「途中までは面白いのに実に惜しい作品」河童の女 HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
途中までは面白いのに実に惜しい作品
8月4日(火)の夜に、イオンシネマ京都桂川まで劇場鑑賞してきました。
私とほぼ同世代で、しかも隣県の滋賀県大津市出身の51歳の新人監督の辻野正樹さんの初長編映画デビュー作という事で、多少贔屓目に観たかも知れません。
私個人的には、映画が始まって直ぐに、辻野正樹監督と同世代の私たちにしか分からないような1980年代のアイドル事情を、従業員の女性の台詞に盛り込んでいた点が、私的にはややツボでした(笑)。
柴田浩二(青野竜平さん)は、山奥の田舎の川辺の民宿で生まれ育ち、今もそこで働きながら暮らしている。
ある日、社長である父親(近藤芳正さん)が、見知らぬ女と駆け落ちし出て行ってしまう。
また従業員の女性も、実は浩二の父親が好きだったらしく、仲居の仕事を辞めてしまうのでした。
浩二は一人で民宿を切り盛りするのが難しくなり、途方に暮れるのでした。
とりあえずは、宿泊客を断り、宴会客だけを接待する事に営業形態を切り替えて、何とか新たな従業員を雇うまで続けようと思っていると、東京から来たという女性(郷田明希さん)が民宿の下を流れる川で溺れているところを助けるのでした。
話を聞くと、溺れていたのではなく、落とし物を捜していたらしい。
とりあえず、民宿に通して、濡れた衣服を乾かして休ませていると、浩二の置かれている事情を知った女性はここで働かせて欲しいというのでした。
彼女はミホと名乗り、無料で働くのでここに置いて欲しいと必死に懇願するので、そこまで言うならば住み込みで雇いますと言い、働いてもらうこととなるのでした。
そんな時、YouTuberの学生達が近辺に現れて、このあたりの川に棲む河童伝説を調べ始めるのでした。そして町内の人々に河童を知っているかと聞き始め、浩二は幼い頃に受けた河童にまつわる事件によるトラウマを思い出すのでした。
そして心惹かれ始めたミホに、自分の中にだけ秘めていた昔話を話し始めるのでした。
その事件があって、浩二はこの場所から離れられなくなっていたのでした。
ミホも次第に浩二に惹かれ始めるのでしたが、彼女は浩二と一緒に居たくても、このまま居られない理由があったのでした・・・。
といったイントロダクションの映画でした。
近藤芳正さん演じる自分勝手な父親に、典型的なクズ兄貴の新一(斎藤陸さん)など、実に散々でドン底の民宿経営の設定ながらも、賑やかし的な常連の宴会客の町内会のメンバーやYouTuberの学生達によるコミカルな演技から笑える部分もありながらも、特に主人公・浩二の抱えるトラウマや、東京から家出をしてきた訳ありそうな謎の女性ミホの秘密にまつわるドラマ部分の展開もしっかりしていて、ミステリアスな脚本仕立てで途中まではなかなか面白かったです。
ただ私個人的には、いくらコミカルな要素を持つ作品とはいえ、謎を多く残したままに、何の解決を見ないままの強引な大団円には、一見すると心地良い着地の様ではありますが、残ったままの諸問題の存在が大き過ぎて、中途半端なモヤモヤ感のみが残されましたし、最後の大団円をどの様に受け取るかで、観客によるこの作品の評価も二分されそうにも思われました。
私的な評価と致しましては、
私とほぼ同世代で、隣県の滋賀県大津市出身の51歳の新人監督の辻野正樹さんのデビュー作という点で多少贔屓目に観ても、最後の大団円については、やはり中途半端なモヤモヤ感のみが残されましたので、五つ星評価的には★★★☆の三つ星半の評価くらいが相応しい映画かと思われました。
次回作に期待したいですね。