「身体も心も傷付こうとも、誰が為に闘い続ける」オールド・ガード 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
身体も心も傷付こうとも、誰が為に闘い続ける
シャーリズ・セロンの2020年のNetflixオリジナル映画。
間もなく続編が配信されるので、まだ見てなかった本作を鑑賞。
アクションにはちょいちょい出ていたが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でアクション女優のイメージを確立。そんなシャーリズ・セロン…いや、シャーリズ姐さんがまたしても魅せるアクション・ヒロイン像。
今回はタフを通り越して、不死身…!?
アンディをリーダーとする傭兵部隊。
元CIAで現フリーランスのコプリーから人質救出の任務依頼。現地に赴くが、それは罠。待ち構えていた敵に射殺されてしまう…。
アンディたちの抹殺が目的…? ではなかった。
死んだ筈のアンディたちが息を吹き返す。
アンディたちは不死の人間たちであった…!
アメコミライターによるグラフィックノベルが原作。
そのアメコミライターが携わった作品に、『スーパーマン』『ワンダーウーマン』『ウルヴァリン』。超人、女性ヒーロー、不死身がリンク。
不死身という存在自体非現実的だが、アメコミヒーローのような非現実よりもっと、地に足付いた生身のアクションとドラマが展開。
コプリーの目的は不死身のアンディたちの存在証明。
製薬会社のCEO・メリックと組み、不死身の研究をし、人類の長寿の発展に活かす。
それにはアンディたちを捕らえる。存在を知られたアンディたちは追われる身に…。
そんな時…。アフガニスタンで任務中の海兵隊。
一人の隊員ナイルが喉を切られ、死亡。
…が、彼女は息を吹き返す。彼女もまた不死身の存在…。
不死身の者たちはお互いの存在を察知する事が出来る。
メリックやコプリーに狙われる前に、アンディはナイルを仲間に引き入れようとするが…。
当初は自分の身に起きた事を信じようとしないナイル。
が、喉を切られても撃たれても死なない自分。認めざるを得ない…。
新たな不死身の存在は200年ぶり。仲間内で最後は1800年代、その前は十字軍の時代。アンディは皆よりずっと長く、正確には不詳。
そんな遥か昔から何世紀にも渡って活躍してきた。時には歴史的出来事や事件にも携わり…。(←ここら辺、『ウォッチメン』みたい)
やはり受け入れられないナイル。離脱する。
そんな時、メリックに雇われた一味が襲撃。仲間のジョーとニッキーが捕らわれてしまう。
所在を突き止め助けに向かうが、メリックやコプリーと組んだ仲間のブッカーの裏切り。
それに気付いたナイルは離脱したものの、助けに向かう。
アンディも捕らえられる。負傷し、いつもなら治癒するその能力が突如失われ…。
不死身とは言え、永遠にではない。いつかは“その時”が来る。
アンディの遥か昔の仲間も。ある日突然…。
アンディにも遂に、“その時”が訪れたのか…?
不死身は人類永遠の夢かもしれないが、同時に苦悩苦痛でもある。
痛みは感じる。治癒はするが、死ぬほどの痛みをどれだけ体験してきた事か…。
身体の痛み以上の苦しみは、心の痛み。親しくなった人、愛した人は必ず先に逝く。時には仲間も…。そんな別れをしない為、周りと距離を置き、果てしないほどの長い歳月、ずっと独り…。ブッカーの裏切った理由もこれ。
そんな自分たちを終わらそう。普通の人々のように限られた時間を生き、終えよう。
そう思った事は何度あった事か。が、今はまだ“その時”ではない。
何故、自分たちが不死身なのか…? 分からない。しかし、必ず理由はある。
負傷したアンディは薬局で手当てを受ける。薬局の女性は何があったか理由も聞かずに。
今日は私があなたを助けた。明日はあなたが誰かを助ける。
アンディたちのこれまでの行いも知らず知らずの内にそうだった。助けた人物が、やがて歴史を動かす存在に…。
これが、自分たちが存在する理由かもしれない。
メリックはアンディたちをモルモットにしか思ってないが(『ハリー・ポッター』のダドリーちゃん!)、コプリーはアンディたちの存在や歴史的貢献に敬意を…。
アンディたちの存在が何かを突き動かす。そして今また、新たな仲間の存在が大きく何かを変えようとしている…。
女性アクション、人種、同性愛…多様性要素は感じるが、アクションもドラマも見応えあり。
シャーリズ姐さんは勿論、キキ・レインも熱演。
キウェテル・イジョフォー演じるコプリーもただの敵役ではなく、利用価値ありと仲間に引き入れ。
裏切った罰で100年の追放を言い渡されたブッカー。そんな彼の前に現れたのは…
アンディの遥か昔の仲間で、魔女狩りにより棺に閉じ込められ、海に捨てられたクイン。500年も深海で溺れ続ける彼女を救出するのかと思いきや、
どうやら続編は彼女との対峙になるらしい。
これは見なくては!
誰が為に。
不死の戦士=オールド・ガードは闘い続ける。
