劇場公開日 2021年4月9日

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「圧巻の結婚式」ハウス・イン・ザ・フィールズ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0圧巻の結婚式

2021年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ドキュメンタリーとのことだが、「ドキュ・フィクション」と言って良いだろう。
ノンフィクションであるが、登場人物はカメラとしっかり正対しており、対象をカメラが追いかけ回すわけではない。

アトラス山脈の山あいの地なのか、山の上は荒涼としていても、住居のまわりは緑豊かで、目を楽しませてくれる。
春になれば、世界が色づき、太陽は蘇り、空気は澄みわたる。
そこで人々は、草を刈り、木の実を食べ、牛や犬と暮らしている。
少女ハディージャは、「風や川の歌」を聴き、崖に座って空想にふけるのだ。

そういう地域色豊かな美しい映像に満ちている作品で、それ自体が一つのテーマと言っていいが、もう一つ「姉の結婚」というテーマがある。

家父長制によって、“男女同等”の「国王令」にもかかわらず、娘の将来は親によって決められる。
一見、悲劇の物語のようだが、必ずしも“女たちが虐げられている”わけではない。
19歳の姉ファーティマは、「女になるのは怖い」とはいえ、結婚して田舎を出て、都会のカサブランカで仕事をすることに期待を持っている芯の強い女だ。
ひとりぼっちで残されてしまい、「姉は私を忘れる」と嘆く妹ハディージャ。しかし父親は、成績が良いハディージャを学校に行かせる。夢の“弁護士”の道が閉ざされているわけではない。

長尺を割いたクライマックスの結婚式は、圧巻である。ここは映画館のスクリーンで楽しみたい。
男も歌い、女も歌い、奇声も上げる。すごい高音だ。ダンスもする。
何よりスゴいのは、女たちの衣装である。それだけで、“目の滋養”になるほどだ。
迫力ある映像に、感動した。

決して、姉妹の物語だけではない。予告編は、すべての重要ポイントを的確に凝縮して映している。
エスニック文化好きな人向きの作品と言えるだろう。
ちなみに、変なペイントをした粗末な3弦楽器を奏でて歌うオッサンも3回出てくるが、こちらも必見である。

Imperator