「心の文字を書け!」ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心の文字を書け!

2020年6月27日
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「ラストレター」「mellow」「パラサイト 半地下の家族」など、2020年に僕が見た映画には『手紙』が良く出てくる。メールやLINE全盛で、直筆の価値がより高まってる現状が伝わるなかで、最もその価値に向き合わせてくれる映画が本作かもしれない。

アメリカの映画で中国の女優が主演という意欲作。

登場人物それぞれが、国籍、貧困、家業、ヒスパニック、実力、容姿、決められた相手、LGBTなど、背景を抱えていて、そのどれもを否定的な目線で描くことなく、優しく手際よく捉えていく。

そして最後はその登場人物がバットエンドのように見えて、生き方として前進しているハッピーエンドのように見せて終わる。取って付けたようではなく、ちゃんと筋も通っているから素晴らしい。

アスターがとにかくかわいい。パワースポットのような秘境に行くシーンが最高。

哲学者の言葉が多く出てきて、情報量がかなり多い作品だけど、最後に言いたいことは「愛を自分の言葉で語ることの尊さ」かなと受け取った。

例えば、告白をするときに、自作の歌を作って歌う人がいる。歌手ならまだしも一般人がそれをすると"気持ち悪い"という反応をする人も一定数いるけど、想いを己の言葉とメロディに託すというのは物凄く誠実なことだったんだと気付かせてくれる。言霊を生み出すのは、かなりの労力と想いが必要になるからだ。

最後に白黒映画と上手く結び付くシーンに号泣。一度否定した状況や言葉も、当人のおかれた状況によってこうも変わるんだと。やっぱりハッピーエンドだったと思う。

素晴らしい映画でした。

わたろー