「ほの暗く芸術色の強い映画」恋する寄生虫 ピギピギさんの映画レビュー(感想・評価)
ほの暗く芸術色の強い映画
林遣都さんのファンで見に行きましたが、小松菜奈さんも素晴らしい。主演2人の熱演がすごいです。林遣都さんはやはり内に秘めるキャラクターが本人とも溶け合い、よく似合います。小松菜奈さんはお若く見えずっと可愛いだけでだけでなく、演技も存在感があり、素晴らしい女優さんです。
しかし、主演2人の熱演と映像美・音楽美で引っ張っていく色が強いので、場面場面は美しかったり印象的でも、よく考えるとよくわからなかったり、あるいは考える時間をくれないで置いていかれる感が強いです。映画への印象が場面が変わるごとに良くも悪くも変わっていく感じです。他方で話自体は理屈っぽく、映え全振りというわけでもないので、そこに齟齬を覚える人が多いのではないでしょうか。
あと、たしかにヒロインとヒーローの役者のタイプが少し違うかな。小松菜奈さんは2次元的な、理想のヒロインが良く似合う女優さんですが、林遣都さんにそういうヒロインは合わないと思います。
以下、原作未読ですが、映画を観て考えたことです。
これだけ色々な要素に手を出しておいて結局古典的な恋愛至上主義に帰着するのか、というがっかり感はラストで感じましたが、これは今の若者向けの王道恋愛映画なのかもしれないと思いました。今の若者は感情的で熱いというよりは、冷めていて理屈っぽい人が多いといいますので、普遍的な話題である恋愛を主題としながらも、単純に好き、運命というように直情的に結ばれるのではなく、様々な理屈を経る本作は、感情よりも理性というような現代の若い層に適合しているのかもしれません。
2つ目には、極めて個人的な観点で恐縮ですが、自身も軽度の社会不安障害を抱いており、その感覚を虫と喩えることは中々的を得ているように感じました。精神疾患は当事者以外に理解されにくいですが、例えばガンなど身体の病気と変わらず、特定の脳内物質の過剰など体の異常でしかなくて、その人の性格や気のせいではないんです。ですから、自分でもおかしいと思っていても、勝手に体や心が違う行動を選んでしまうという苦しさがあります。自分の意思や性格由来でないものに気持ちを支配されて、しかしそれを自分の性格や選択なんだと思っているというのは、まさしく寄生虫と同じでしょう。思うに原作者さんも、精神不安を経験した上で考えられたのではないでしょうか?
最後に、主人公たちが潔癖や視線恐怖に苦しむシーンは少し自身の経験を思い出し、少し恐怖を感じたので、本当にそういった症状が強い方は観るのが辛い可能性が高いと思います。しかし、「自分はこんな問題を抱えているから人と深い関係になることなんてできない」という諦めと絶望を覆したいという意図を自分は感じました。そのメッセージは、社会不安のあるなしに関わらず、普遍的で王道の人間愛の物語の結末といえるでしょう。
あと、前半がちょっとグロめや嘔吐のシーンが多くて、それもちょっと怖かったな。本当に苦手な人はちょっと気をつけた方がいいかも。