「寄生虫の反乱」恋する寄生虫 shitoさんの映画レビュー(感想・評価)
寄生虫の反乱
小松菜奈さんが持ち歩いてた「寄生虫なき病」を昔読んだが、これがこの映画のモチーフになっているのかなと思った。
現代はいろんな公衆衛生の向上や薬によって、感染症は減少したが、それと反比例するように新たな病が増えてきていて、花粉症やアレルギー、自己免疫疾患、ひいては精神疾患、発達障害、がん、うつ病まで、まだまだ人間の力では解明されていない病が出てきて、それに細菌や寄生虫が起因しているというのがこの本の説だった気がする。
今回は現代病とも言える潔癖症や視線恐怖症など不安障害も取り上げられ(これらも寄生虫が影響しているかも)、2人が恋愛しながらそれらを克服していく様子が描かれている。
それと同時に人は実は自分の意志ではなく、寄生虫など外部要因に影響されて生きているというところも共感できた。現に心の病や体の不調などの大半は、実は食べ物や生活習慣、仕事や人間関係のストレス、ひいては体内の細菌や寄生虫など自分以外のものが影響しており、そのバランスが崩れた時に人は不調に陥るというのは現代医学の一つの説としてあり、それらが人の思考や判断に大きなウエイトを占めてくるのは事実その通りでもある。
内容としては恋愛のおかげで2人が病を克服し、悪とされる虫を取り除いても、2人の気持ちは消えずに、普通の生活もできるようになってよかったよかったという感じだったが、映像や音楽が情緒的で美しく、表現は若干グロい部分もあったが、恐怖症の症状を可視化している表現は本当にリアルで面白かった。
寄生虫と恋愛というテーマをうまく融合しながら、その奥に現代病の闇や人の意思や本能、生きる意味的な所も考えさせられて、観終わった後に心地よい余韻が残った印象的な映画だった。