「恋する二人は止まらない」恋する寄生虫 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
恋する二人は止まらない
同時進行する二つの物語
潔癖症の青年と視線恐怖症の女子高生が、父を含む医学者の仕掛けにハマり、やがて恋に落ちる物語。
一方で、肉親の死がきっかけで寄生虫の研究に没頭しているうちに、フタゴムシから離れられなくなる、二人の医学者の物語。
二つの話が絡んでシネマは展開。
医学者たちが若い二人を脅かす
若い二人の物語は、幼少期に親の自殺を体験した話を背景に、何処かに救いを求める形で進んでいく。ただしこの辺の悲惨さは、かなり控えめな表現になっていた。
一方、医学者の物語は、若手の研究者が車の中で賢吾にひじりの見守りを依頼したことから始まる。寄生虫を研究して、自殺者を減らそうと言う彼らのストーリーが、不協和音として若者の物語を脅かしていく。
確かに恋は重篤な病であって、生き物を支配する寄生虫が絡んでいても不思議ないです。
ただ、それ専門に研究する医学者と施設がばちっと全面に出てくると、奇想天外な感じは免れないとは思いました。興味深いけれど。
危ういストーリー
世界を拒否して独りでいると寄生虫に巣食われて恋患いに罹り、やがて身を滅ぼす。でも「独り」に共感してくれる別の「独り」がそばに寄ってきてくれると、その理解者の温もりで虫のタマゴができて、本物の幸せまで掴める。
ただしこの作品は、一つ間違えばいつSFホラーやコメディータッチに変わっても不思議ないところもありましたね。
もしかしたら、観る人は最後まで簡単には着地点を見いだせない、そんな危うい感じを出すのが本作の狙いだったとか! 恋は危険な綱渡りでもあります。
小松菜奈が導くハッピーエンド
でも、不登校な女子高生の小松菜奈だけ見ている限り、幸せへ向かう道のりは確かに望めました。
彼女の、あのハンバーグの食べ尽くし感、
あたしを抱きたい? と聞く時のぶっきらぼう感、
ヘッドホンを奪ってPC画面を覗き込む時の、人の物はあたしの物感、
そして部屋のドアを全力で蹴り飛ばす時の、爽快な傍若無人感。
不貞腐れて生意気でも、可愛い……のではなくて、不貞腐れるほどに、生に対する飽くなき欲望のようなものも漂わせていました。
作品によって、人生に対するスタンスは変わっても、彼女にアンハッピーエンドは似合わないとな思いました。