劇場公開日 2021年11月12日

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「小松菜奈さん、ご結婚おめでとうございます」恋する寄生虫 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0小松菜奈さん、ご結婚おめでとうございます

2021年11月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 知人に対人恐怖症の人がいる。他人に近づくのが怖い、見られるのが怖い、人と話すのが不安、といった症状がある。当然ながら会社などの一定の場所に通勤するのは不可能だ。そもそも面接に出向くことさえ出来ない。しかし幸いなことにこの人はPCスキルがとても高く、ネットで知り合った人がそれを知って、最初からリモートワークでいいということでその人の会社に採用された。こういうことは多分珍しい話で、知人は僥倖に恵まれたのだと思う。恐怖症や鬱病で社会生活を営むことができずにひきこもったり、苦しんだりしているひとは大勢いる気がする。

 本作品で小松菜奈が演じたサナギは、視線恐怖症なのに外を出歩くことが出来るという強引な設定である。相手役である林遣都が演じたケンゴは、度を越した潔癖症なのに普通に外出するという、こちらもかなり強引な設定だ。設定が強引だからいろいろ辻褄が合わなくなるが、芸達者な二人がなんとか物語にしてしまう。演出も大変だっただろうが、演技はそれ以上に大変だ。改めて小松菜奈と林遣都の演技力に感心した。

 本作品は欠点を持つ男女が、少しずつそれを克服して仲よくなるというベタなストーリーだが、そこに寄生虫を絡めたことで、俄然ややこしくて、いい物語になったと思う。トキソプラズマの話は学術的な根拠は何もないが、話としては面白い。
 対人恐怖症も潔癖症も脳の症状だから、寄生虫が脳に寄生するというのが上手いアイデアだ。医師が登場すれば真実性も増す。その医師が石橋凌であれば、存在感といい演技力といい、言うことなしだ。作品としての出来はいいと思う。

 小松菜奈は25歳になって、セーラー服はこれが最後かなと言っていたが、スタイルと言い、透明感のある白い肌といい、まだまだ女子高生を演じられるだろうと思ったのだが、さすがに人妻になってしまったら難しいかもしれない。

 結婚は他人とずっといるから、ストレスが溜まる一方で、孤独ではないという安心感がある。恋は盲目アバタもエクボというが、結婚するとすぐにエクボではなくアバタだったことが解る。しかしアバタも相手の個性だ。尊敬できる相手なら、どこまでも許せるし、どこまでも妥協できる。人間としての幅も広がるだろう。それはつまり、俳優、女優としての幅も広がるということだ。今後の菅田将暉と小松菜奈の演技には、これまで以上に期待できるかもしれない。ご結婚おめでとうございます。

耶馬英彦