ホテルローヤルのレビュー・感想・評価
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原作が生かせていなくて残念
桜木紫乃の直木賞受賞作の映画化です。北海道の原野に建つラブホテル「ホテルローヤル」を舞台に、美大受験に失敗した娘、経営者の両親、ホテルの従業員、ホテルの客などが描かれています。いわゆるグランドホテル形式ですが、各エピソードが冗長で描き方が浅く、心に響きませんでした。原作の連作短編集は時系列が逆になっていて、徐々にいろいろな繋がりがわかってくるような構成になっていますが、映画ではそのあたりが生かせていなくて残念でした。
主人公・ホテル
オープニングが良くないんだよね。丞威と冨手麻妙のシーンは必要なのかな。
そして過去に戻って波瑠がようやく出てくんの。ここからキャラ紹介になるんだけど、テンポが良くないのと、エピソードがそこまで面白くなくて退屈なの。
内田慈と正名僕蔵が出てきて、お客さんのエピソードになってからが面白いの。内田慈が出てきたときは「渋いぜ、キャスティング」と思ったね。いい俳優をうまく使ってんの。
伊藤沙莉と岡山天音のエピソードがクライマックスかな。ここのマスコミ対応の松山ケンイチかっこいい。
「このホテル自体が主役の一人」が監督の意向であったらしいんだけど、主役の一人というか主人公だね。ホテルが観た人々が描かれてる。それを淡々と眺める映画だと解ってから面白いんだけど、そこまでに時間が掛かったな。
ラストも波瑠のアップで一気にエンドロールにいって欲しかったんだけど、ロングの画が入って「なんだろう」感あった。エンドロールにつなげるにはロングの画が必要なんだとは思ったけどね。
シーンの切り替えをせずに時間を変える脚本と演出は良かったな。
あと音楽。心情を説明する台詞が抑えめだから、音楽が語ってるんだよね。選曲が合ってて良かった。
文学作品の映像化で、そんなにカタルシスはないけど、こういう映画に豪華俳優陣がそろうのもいいなと思ったよ。
作品の背景に関する考察
荒涼とした釧路湿原に面した
高台にあるラブホテル。
経営者の一人娘として育った少女の
鬱屈した日常と
ラブホに非日常や逃げ場を
求めて訪れる客や
両親、従業員らが織りなす人間模様が
繰り広げられる。
作品では波瑠演じる主人公中心に
生々しい裸の人間の姿が
オムニバスに描かれるが、
登場人物たちが暮らす地域の歴史や
社会背景にはほとんど
触れられていない。
しかし、実はここを知ると
物語は深みを増し、
蜜柑の意味も鮮明に見えてくる。
ラブホが作られたと思われる
昭和の後期、
釧路は北洋漁業の基地として
日本一の水揚げを誇った。
良質の石炭が採れる海底炭鉱。
力強く白煙を吹き上げる製紙工場。
霧と湿原で有名な釧路だが、
もともとは
漁業・石炭・製紙の三大産業の
隆盛により栄えた都市である。
昭和の経済成長期から
平成のバブル期にかけて
釧路の繁華街は泡銭を手にした
漁師や炭鉱夫、
工場労働者で大いに賑わった。
女たちは街一番の高級百貨店、
丸三鶴屋で
流行りのブラウスや高価な果物を買い
子どもたちは最上階の大食堂で
お子様ランチをほうばる…
それが市民の幸せの証だった。
エンディングで若き日の主人公の父親が、
母親に食べさせたいと箱入りの蜜柑を
買う秘話が明かされるが、
この蜜柑を買ったのが
市民自慢の丸三鶴屋だった。
百貨店での買い物は
忙しい毎日の中のささやかな贅沢であり、
買ったものを誰かに贈るのは
最大級の愛情表現でもあった。
蜜柑は夢を抱いて
ラブホ経営に乗り出した
両親の愛と夢の象徴であるとともに、
街が最も輝いていた
時代の象徴でもあるのだ。
作者は釧路出身で実家がラブホ。
丸三鶴屋と蜜柑には作者の
深い郷愁の念が込められているのではないか。
当時、釧路には
ディスカバージャパンのブーム以降、
本州や道内各地から人々が押し寄せ、
観光も重要な産業になっていった。
観光客が目指すは神秘の摩周湖や
タンチョウ舞う釧路湿原。
人口も増加して交通量が増えたため
幹線道路が急ピッチで整備されて
人や車が激しく行き交い
街は活気に満ちていた。
映画「幸福の黄色いハンカチ」で
武田鉄矢演じるキンちゃんが
フェリーで降り立ったのが
ちょうどあの頃だった。
一発当てようと目論む輩は
土地がただ同然の安価な
郊外のロードサイドで素人商売を始めた。
ラーメンと豚丼しかない
急ごしらえのドライブイン。
怪しいアイヌの民芸品や
マリモのキーホルダーを売る土産物屋。
悪趣味な装飾のラブホやモーテルも
次々作られた。
舞台となったラブホは、
そんな時代に産声を上げた。
時は流れ、平成、令和へ。
二百海里規制で北洋漁業は壊滅。
エネルギー政策の転換で炭鉱は閉山。
経済の大黒柱を絶たれた街は
光を失っていった。
昭和59年の最盛期22万だった人口は
今や16万台に。
景気の悪化と少子高齢化で中心街は
空き地だらけになった。
主人公の父親が蜜柑を買った丸三鶴屋も
平成8年廃業に追い込まれた。
多くの市民が職を失い、
生活保護世帯が増加。
若者はみな札幌や東京へ
出て行ってしまった。
残された者たちは
仕事はないが時間はあるので酒や色事、
パチンコにのめり込む者が後をたたず。
作者は残酷なまでに落ちぶれて行く
街の姿を間近に見てきたはずだ。
作品の中では、
両親の不倫や従業員家族の犯罪、
行き場を失った教師と教え子の心中等
ド底辺のエピソードが描かれるが、
釧路では実際に十分起こりうる出来事だ。
なのでこの作品の世界感は
釧路で生まれ育った作者の記憶や実体験、
地域社会への不安と
深く結びついているのではないか。
物語のエンディングで
主人公は若かりし両親が築いたラブホを廃業。
閉店した丸三鶴屋に別れを告げ
新たな人生をスタートさせる。
現実にも昭和の時代に作られた
家や会社、工場、学校、食堂、飲み屋が
廃墟と化し
釧路の街は開拓前の原野に戻りつつある。
そんな中、
最後の頼みだった製紙工場も
デジタル化とコロナの猛威により
操業停止に追い込まれた。
まもなく街にはトドメが刺される。
美しい風景とは裏腹に
人々は貧しくとも道徳的でなかろうとも
あの希望に満ち溢れていた時代の
記憶を胸に
必死に土地にしがみついて生きている。
エンディングで夜空に光り輝く
ホテルローヤルの看板。
それは栄枯盛衰を経た釧路の街で
ラブホの娘として育った作者の
青春そのものだと思えてならない。
見逃した
舞台挨拶つき公開初日観ました!
道民としては、ヤスケン出てるし、北海道釧路の話だし、観とこうと思って観ました。
話の流れは淡々と流れます。
感情移入とかはあまりしなかったです。
ヤスケンの年を重ねていく、工程がメイクのおかげもあるのですが、演技とても良いです。
エンディングロールのヤスケンも良い。
ラストの今と昔の交錯の書き方が良かった!
なぜホテルにみかんの意味🍊
姉と一緒に鑑賞したのですが、姉が、マツケンと波瑠のベッドシーンに、心中した2人が鏡越しに映っていたそうです!
心霊かと思ったそうですが、、、
監督やるな!笑
わたしは見逃してしまいました泣
悲しい💦
伊藤沙莉ちゃんの北海道弁が一番良かったです♬
マツケンは、最初が青森訛り出てたかなぁ。
ヤスケンの演技一番良かったかも。
波瑠ちゃんの冷めた演技笑えました。
舞台挨拶も面白くクスクスみんな笑ってました。
演技をしていない波瑠ちゃんめっちゃ可愛くて綺麗でした。
全体的にぬるい
グランドホテル形式の少しずらした描き方だが、世界観がものすごく小さく感じる。
登場するカップルの人生を、短い時間で描いていくわけだが、これが非常に薄っぺらい。
生々しさも艶っぽさも、哀しさも悦びも表面的。
俳優がみんないいから見れちゃうけど。
さよなら歌舞伎町を思い出して、あの映画のなんとも言えないラブホテル臭みたいな、生々しさ。
そういうのを映画から感じたいんだな〜
原作は発売当時読んでほとんど忘れちゃったけど、色んな人の秘事を、ホテルだけが見てきた…という感慨が良かった記憶。
それを、娘の10年間と成長物語として構築したのでしょうが、なんか凡庸な家族映画になっちゃった。
だいたい、ハルの外見が変わらなすぎて何年経ってるのかさっぱりわからんかった。
なんで日本の映画ってもっと外見的な作り込みをしないんだろう。
【"「ホテルローヤル」の部屋に蜜柑が常に供えられている訳・・ " 何故、人は且つて深く愛した人を裏切り、捨て、不倫をするのであろうか・・。 】
■率直な感想
-武正晴監督は、"非日常の空間"に、様々な理由で訪れる男女の関係性を描く事で、彼らと接した、雅代(波瑠:透き通る様な美しさである。)の、人生に対する価値観の変化を描き出そうとしたのであろうか?-
・両親が不和で、母(夏川結衣)に逃げられた父(安田謙)と、札幌の美術大学受験に失敗し、不本意ながらラブホテルの運営をする事になってしまった雅代が出会った、ラブホテルに来る様々な人達
それは、
「日常の忙しさに疲れた妻が、夫と非日常の空間で夫に甘え、回りを気にする事なく、声を上げて交歓する場」であったり、
「妻が不倫している高校教師と両親から捨てられた女子高校生」であったり・・・
-掌編の積み重ねで、各男女の関係性を描こうとしているのだが、如何せん描き方が浅くなってしまっている。
伊藤紗莉さん、岡山天音さん、安田顕さん(あるレビュアーの方から”抜けているではないか!”と端的な指摘あり。若き日の情熱溢れる姿からの零落した老年期に入った男を見事に演じている。仰る通りである。2020.11.26追記。)、流石の貫禄の余貴美子さんを始め、役者さんは良いのだが・・。-
・がある日、悲しい出来事が起こり、「ホテルローヤル」の経営は徐々に、厳しくなって行く・・。
-だが、きちんと描かれていない・・。-
<雅代が、高校時代から好意を持っていたアダルトグッズの営業マン、宮川(松山ケンイチ)に、廃業を決めた後、身を委ねようとするシーンの二人の会話は良かったし、役者も皆さん良かったのに、何故か心に響かなかった作品。
その理由は"明確"で、個々の人物の描き方が表層的であるために、作品全体に重みがなく、観客に響くモノも、軽くなってしまっているからでは無いかな?と思った作品。>
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