「凄まじいミステリー」ストレンジ・アフェア R41さんの映画レビュー(感想・評価)
凄まじいミステリー
2020カナダの作品
物語の中でメリッサのセリフ 「たどり着く先は結局同じ」
複数回登場するこの言葉がこの作品のテーマ
つまり、子供は何でも訪ねてくるが、大人はその質問に正面から答えられないことが多い。
その答えにたどり着いてないのも理由だが、「人はそれぞれ自分が正しいと考えている道を進んでいる」
同時に人は、「他人の歩いている道は間違っていると思っている」
そして、「たどり着く先は結局同じ」と締めくくる。
この言葉そのものが超難関ミステリーだ。
さて、
この物語の登場人物たち
物語の根幹に位置するのがシャーリーンだろう。
息子ロニーの事故死によって精神的にダメージを受け、誰にでも突っかかってしまう性格になったのだろう。
物事を決めつけてしまう彼女は、絶えず自分が正しいと考え、他人の言動に腹を立てている。
その原因が、ロニーの事故死だった。
あれから5年経ち、ロニーの恋人メリッサが訪問した。
彼女は妊娠していて、臨月だった。
この事実は、シャーリーンにとって「侮辱」を受けたと認識された。
加えてメリッサは、「この子はロニーの子だ」と言った。
一般的に可能性があったのは精子凍結保存法
そして別れた夫が一枚嚙んでいると思った。
医師である夫は、シャーリーンの錯乱状態とすべてを拒否する態度に我慢できなくなって離婚、若い女性と再婚していた。
さて、、
この物語の謎
それはメリッサはいったい誰の子を身籠ったのか?
そして、
ベンが警察を退職する際に袖の中に入れた睡眠薬は、いったい何に使ったのか?
ここが明らかにされてない。
そして物語の肝でありながら、視聴者に考えろと言っている。
ゲイルが真っ先に考えたのが、混乱状態のメリッサに睡眠薬を飲ませてレイプしていたことだった。
このあまりにもショッキングなことに、ゲイルは完全に自分自身を見失ってしまった。
これはシャーリーンがロニーを亡くした時と同様 つまり群像だと考えられる。
正気を失い自暴自棄になって襲い掛かってきたゲイルは階下に転げ落ちて死んだ。
この事実に対する元警官のベンの行動
地上で様子を見ていたフィリップを殺害しようとした。
これが冒頭のシーンとなる。
この部分を考える。
ベンはゲイルと約束していた禁煙を破っていた。
些細なことだが「嘘」がある。
この些細な嘘は考察するポイントでもある。
メリッサ
彼女は事故後にも何度も現場を訪れていた。
そしてロニーの父リチャードと話をするようになった。
彼はメリッサがベンのコテージに住むための毎月の費用を工面するようになる。
面白いのは、メリッサがこの物語の主人公であり彼女がナレーションをしているという点だ。
つまりこの物語は、彼女にとっての「真実」だということとして考えなければならない。
以下、完全に妄想となる。
彼女にとってはキリスト教よりも魔術の方が正しいと思った。
何もしない神より、ロニーが一緒にいてくれると信じたい気持ちの方がずっと大きい。
多くの人は神を信じる。
それはその人の考えであり、自由であり、その人の歩む道だ。
しかし彼女はほかの道を歩くことにした。
彼女が信じる道
このことは霊能者の言葉であもあったが、自己催眠による思い込みも加算されている。
人は皆、自分が信じたいことだけを信じるからだ。
そこに寄り添っていたのがベンで、彼女の妄想癖に睡眠薬というものを用いて関係していたと考える。
メリッサはそれをロニーとの邂逅だと信じて疑わない。
その結果が出産となる。
メリッサには出産した事実こそすべて自分が正しかったことに置き換わる。
そして、
そもそも人とは、大なり小なりこのような思い込みを繰り返しながら自分が正しかったことを勝手に証明しているのではないだろうか?
人は皆、それぞれの幸せの在り方を模索している。
そのために何を信じ何を排除するのかを決めている。
「たどり着く先は結局同じ」
この辿り着く先とは、各々の「幸せ」なのではないだろうか?
メリッサにとって、事実がどうであれ、今でもロニーと生き続ける以上の幸せはないのだろう。
だから、
この作品は、メリッサにとっての幸せ 彼女が信じて疑わない幸せを描いている。
そう思った。
このミステリー 超難関だった。