護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価
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日本の福祉を考える大切なテーマ。
またまた予告編に騙されてた。容疑者と刑事の騙し合いや駆け引きを楽しむ映画かと思って着席したのに、冒頭から何かトーンが違ってた。
大震災の避難所で出会った、婆さん、兄ちゃん、女の子の3人が、まるで家族の様な関係になる。それから何年後かに起こる事件がきっかけで、兄ちゃんが放火で捕まる。数年後、出所してくるんだけど、そのタイミングで当時の関係者が連続して殺害される。そりゃ、疑われるよな。果たして彼は犯人なのか?てのは、サブストーリーでした。
本筋は生活保護についての国のシステム。このテーマ、最近、個人的に考えていたこともあって、グイグイ心に刺さってきた。日本の年金や生活保護って、とても中途半端なシステムだと思ってる。俺的にはベーシックインカムを検討して欲しい。そうすれば、面倒な年金や生活保護は無くなり、国民が平等になれると信じてます。
ま、それは置いといて、この映画を観るタイミングが惜しかった。清原伽耶ちゃんの演技が、毎日観てる朝ドラのヒロインと重なってしまった。最後の、お帰りなさいって婆さんの遺言、意識的?
【ネタバレ】そこそこ涙腺を刺激する。ただストーリーに無理くり感と、現実にはキレイごとで済まない問題だから、感動とまでは行かない。
東日本大震災と生活保護。多くの人に関わる問題、今後も超高齢化社会が来て重要な問題なだけに、「お涙頂戴、感動」に到達するには相当な無理を伴う。
そういった前提条件下においては、この映画は健闘している。ちょうど震災から10年で皆、冷静に、自粛ではなく、オープンに意見できる時期に公開は意義あることだ。
テンポも場面切り替えもよくメリハリも効いていて、倍賞美津子のおばあさん中心に感情移入しやすくて、合格点映画であることは相違ない。狂言回し的な阿部寛もいい味出している。桑田の歌は間接的に効いている。広報効果。涙腺の強度によるところ大な映画ではある。でも実際はこんな3人組いないよなぁと深くこの無理くりな構成を考えてしまうといけない。
ただ、佐藤健、チョット、後半まで、社会不適合すぎ、最後は清原果耶演ずる実は犯人説得する段階で人情味が出てたけども、チョット暗すぎ。現実離れのクラさで彼だけは途中まで感情移入できない。
震災は実際に被害を受けた人しか、本当の苦しさはわからないよなぁ。私も別件で最愛の家族を事故で突然失ったことあるけども、突如ハシゴ外される絶望感は辛いよなぁ・・・気力が全部失せて、現実が受け止められない。プラス不自由な避難所生活だもんなぁ。
気になったのは、やたらこの映画の中で「善人 悪人」のカテゴライズしてたこと。明らかな間違いで。人は誰でも「良い部分悪い部分」あるんだよ、ただ局面によってどちらかの部分が顕在化するにすぎない。勿論「善人性成分過多 悪人成分過多」の人も何割かいるけども。その意味でこの映画を象徴するのが吉岡秀隆演ずる代議士。この男の相矛盾する姿がこの映画の全て。
生活保護は悪でもなければ、甘えでもない、運用する役人も苦心するだろう。確かに「働けるし適切な求人もあるのに働かない」人がいる一方で、本当に生活保護が必要だった人が餓死等で命を落とすケースも多すぎる。民生委員や社会福祉協議会が役所の足りない杓子定規なところを補えればいいのだけれども。
ストーリーに乗せられてチコっと目元が潤んだ私でしたが、3人の他人の結びつきは良いのだが、現実離れしているし、佐藤健の突き抜けた正義感、かんちゃんこと清原果耶の実行力が正直言って痛い。もう少し器用に復讐できたろうに。まあそれもカタルシスに結びつく一因ですけども。特に清原かんちゃんは役所の該当部署勤務だからこそ、生活保護の問題は「正義」の一筋縄ではいかないこと理解できたはず。何故に凶行??結局は佐藤健はわけわからん公務執行妨害だけで無罪放免のはずなのに仮釈放取り消し、解せない。
正義なのか
政治家たちよ、この映画を観ろ!!
大きな存在に苦しめられる人々の絶望と希望
貧困化…
メッセージが強すぎて泣いた。
『護られなかった者たちへ』鑑賞。
*主演*
佐藤健
阿部寛
*感想*
久々の映画館。007と迷いましたが、佐藤健と阿部寛のファンだったので鑑賞!
東日本大震災が起きて、様々な人間の人生が狂わされて影響が起きて、生活保護が絡み、重たいサスペンスヒューマンドラマでしたが、次第に衝撃的な事実が明らかになる展開はとても良かったです。ただ、かなり切なかったです。。
最初は登場人物に感情移入が出来ず、時系列が若干分かりにくかったけど、中盤~終盤が良かった。
64に出演されてたキャストが豪華!
佐藤健と阿部寛の演技も抜群に良かった。泥水に顔半分を押し込まれて、「ふざけんなー!!」と叫ぶシーンは圧巻でしたし、阿部寛は、変わり者の刑事で、終始良かったです。永山瑛太の演技が怖かった!
個人的には暗くて重たい映画は苦手ですが、この作品は重たくて、メッセージ性が強すぎて、思わずポロッと泣いてしまいました。感動も味わえたので、とても素晴らしかったです!
思ってたよりあっさり
震災、貧困、孤独、疲弊、復讐と悲しくてやるせないテーマたくさん。金曜ロードショーとかでやってたら家でぼーっと観たい系の映画。
面白いといえばおもしろかったけど率直に言うとストーリーが自分の想像通りだったのと、少し前に重すぎた映画「空白」を観たからか何かテーマや役者さんのスケールのわりにあっさりしてて物足りない気持ちになってしまった...
清原果耶ちゃんはあの若さであんなに哀しい顔を見せれるの最高だし、ちょっとしか出てないけど内田慈さんの途方にくれた顔とか怖いなって思うくらいリアルだし、倍賞さんの「え」が「い」になっちゃう田舎のお婆ちゃんの話し方優しすぎて愛しいし、細かく言うと所々は大好きなんです。
が、全体が、情報少ない阿部寛と無口すぎる佐藤健メインで進むので感情移入しきれずさらっさらーとしてしまったような。
阿部寛は主役ぽいわりに警察としての活躍や、過去、家庭の思い出のシーンも特にないから最初から最後まで印象薄くて、何でお前だけが急にこの事件に執着してでしゃばってる風になるんや?他の警察官も被災者では?その態度なん?こんな態度ならどうせ良い父親でもなかったのでは?って何か反発心のようなものさえ芽生えてきて特に入り込めなかったw原作の二人の刑事はもっとまともだったと思うんですが、謎の変更いります?
相方の林君は、キャリアとか苦手意識とか小言言うシーン結構あったけどそもそも話にそんなに必要な存在だったのかも謎いから捜査シーン全て薄くて謎い。林君がいらないわけじゃないけど代わりにもっと健と果耶ちゃんと倍賞さんの尊いシーン見たかったかも。
佐藤健はふてくされ兄ちゃんからの回想シーンの優しい「行ってきます」が温度差凄い。高低差ありすぎて何とかかんとかよ。でも最初セリフなさすぎるし、序盤ほんと不審者。パンの配給受取プッツンも冷静に考えると不器用通り越してやばい奴なのよ。
あと瑛太の役の性格設定やばない?良い人としても公務員としても成り立ちがわかめ。
あとあと私の心が疲弊してるからか、もう桑田佳祐さんの歌をまともに聞けなかった。明日は今日より素晴らしいって、何かもう励まし疲れ?なのかエンディングで息がつまってしまった。
【物語としてだけでなく】
僕は、この原作も読んでいて、震災と貧困を結びつけるのは、実は、どうかと考えたりしていた。
なぜなら、貧困は、震災と関係ないところでも、高齢者や一人親世帯を中心に拡大していて、深刻化しているからだ。
この作品を観て、福祉事務所で働くスタッフに憤りを感じるという人がいたら、その前に、この国の現状を客観的に理解して欲しいように思ったりする。
まず、貧困率の定義はご存じだろうか。
貧困率とは「相対的貧困率」で表される低所得者の割合や経済格差を示す指標のことで、 収入から税金や社会保険料を引いた可処分所得を高い順に並べ、中央の額の半分に満たない人が全体に占める割合のことだ。もし不明だったら、調べてください。
この貧困率が、日本は6人に1人の割合と言われ、2018年のデータだが、G7では、日本は所得格差の大きいアメリカに次ぐ高さだ。
貧困率
日本: 15.7%
アメリカ: 17.8%
イギリス: 11.7%
ドイツ: 9.8%
フランス: 8.5%
イタリア: 14.2%
では、平均所得はどうだろうか。2019年のデータでドル換算したものが以下の通りだ。
平均所得
日本: 41457ドル
アメリカ: 65636ドル
イギリス: 47424ドル
ドイツ: 47490ドル
フランス: 43771ドル
OECD平均: 41457ドル
OECD35カ国中20位で平均を下回っている。
日本は賃金の伸び率も低く、それはデフレが長引いているからとか、デフレなんだから可処分所得は増えてるとか、色々なことは言われているが、日銀が異次元とまで言われる金融緩和をして、その施策としてETFを通じた株の買い入れまでして、インフレ目標の達成はおろか、デフレの克服さえできていないのだ。
欧米では、今や、コロナ禍からの回復の途上で、インフレ懸念まで囁かれているにもかかわらずだ。
基本的には、景気が回復して、企業業績が改善して、賃金が上がって、消費にお金が回って、そして、インフレになるのだが、もう分かる通り、欠如している部分があるのだ。
金融緩和だけでは、当たり前だが、足りないし、財政だって使い方によっては景気の刺激にはならないし、規制緩和も、既得権益を打破するくらいの大胆な施策が必要なのに、どうでも良いような規制緩和(例えば、加計学園とか)で、裾野が広い規制緩和にはなっていないのだ。
岸田さんがやっと、分配だと言い始めたのは良いが、裏で安倍晋三だのが暗躍しているようでは先が思いやられる。
それに岸田さんも既得権益擁護に見える。
30年ぶりの宏池会からの首相だなどと言っているが、宏池会は、保守本流の中心で経済政策で他の派閥をリードしていたのだから、日本を一段と成長させる既得権益の打破は外せないのではないかと考える。
そして、福祉事務所の人達も、中央の高級官僚とは違って、それほど多くの給与をもらっているわけではないのに精神的な負担は、実は大きいように思う。
それで生活保護を受ける人が増えれば自分達の仕事は増える。
仕事が増えたからといって、予算がないと言われ、スタッフが増えるわけでもなく、なにやら、コロナ禍の保健所を彷彿とさせるところもある。
だから、原理原則だということになるのだ。
だから、何が問題なのか、よく考えて欲しい。
この作品を観て驚いたのが、清原果耶さんだ。
この辛い役をよくやり切ったと思う。
モネとは全く別人が演じているように見えた。
震災と貧困を結びつけることで、単純なバカが、震災だからと言いかねないのではないかと心配しているが、真面目に考えて欲しい、僕たちの国のテーマだと思うので、スコアは意図的に高くさせてもらいました。
影のある青年役と変にアツい刑事役
全ての伏線が回収される
魂が、泣いた。
見てよかった
見てよかった
という言葉に尽きる。
ラブコメ好きの自分にとっては、
かなり重いテーマで、見るのに気合がいると思いながら見に行ったけど、
本当に見てよかった。
原作を読まず、前情報ほとんどなく観に行ったので、話の展開に引き込まれ、ラストの衝撃もすごくて、映画館でどんどん涙が出てきた。
お涙ちょうだい的な感じはないし、くどい説明もなく、押し付けがましさもなく、自然と涙が出た。
予告で聞いた言葉は、こういう意味だったのか、というのが幾重にもあって深い。
役者さんの演技も、皆さん素晴らしかった。
佐藤健は演じる役ごとに全く違っていて、毎回ハマり役だと思わせる。今回の役でも、顔つき、表情、声、話し方など全てでしっかり利根という人格が現れていて、役にすごい説得力があった。
清原果耶は、初めてしっかり作品を見たが、本当に圧巻の演技で、異口同音に絶賛されているのがよく分かる。
総じて、残念だったなという要素が思い当たらない。
結論
ぜひ多くの人に見てほしい映画。
ネタバレ無しでそれなりに力を込めて書くのは難しいですね
清原果耶さんの起用。
これだけでこの映画は大成功‼️
と私は言い切ります。
あ、それと、佐藤健さんがこの映画でも剣心ばりに走ってます。最初の避難所でのダッシュはほとんど瞬間移動でした。
護るべき立場にいる者が、護られるべき者に向かいあった時、正しい行動とはなにか。
そしてあなたがその護るべき立場の者であったら、どうするか。
今、(上映館が少ないため結果的には密かに)話題となっている『由宇子の天秤』における正義についての問いかけと基本的には同じことをズシンと訴えてきます。
例えば、少年ジャンプの三大原則(友情、努力、勝利)に基づく判断だけで、次の行動を選択できるような世の中であれば、あまり悩むことはありません。
残念ながら、現実の世の中はもっと複雑で、生きづらいです。
何かに対処しなければならない時、多くの人は利害関係に基づく合理的な判断に加えて、良心、プライド、矜持、恩義や義理、人間としての尊厳や尊重、などさまざまな要素を絡めなくてはなりません。
この映画では、震災がひとつの大きなテーマ、というより背景そのものになっており、原作より比重を高めていますが、たぶんなるべく多くの人に分かりやすく共感を得た上で、重要なテーマも一定数の人たちにはきちんと伝わるようにしたい、という心情があったからだと想像してます。だから、生活保護の問題も決してお座なりにならぬよう描くけれど、原作よりも震災のほうに軸足を置いた。
私はそう感じました。
以下、長くなりますが、私はとても大事なことだと思うので、敢えて原作とネットからの引用を書かせていただきます。
原作の中で、福祉保健事務所の職員から笘篠たちにこんな話が語られるシーンがあります。
『 』内は原作からの引用部分ですが、一部中略ありです。
『わたしたちは福祉と謳われる組織にいながら、福祉を必要としている者たちを弾かなければならない。そういう矛盾を抱えたまま従事する者の気持ちがあなた方に分かりますか』
そして厚労省が全国の福祉保健事務所の所長を集めた会議でのことを披露する。
『席上で示されたのは各自治体間での生活保護利用率の比較です。保護率の高い自治体は怠けていると名指しでこき下ろすんです』
(つまり、保護申請を弾いている自治体のほうが評価される、ということです)
『その会議で優秀だと評価されたのが北九州市です。ご存知かもしれませんが、翌2007年にはこの北九州市から「おにぎりを食べたい」と書き残して餓死した男性のケースが明らかになりました』
その北九州市の事件をネットで検索したら、下記のような新聞記事が引用されていました。
2007年7月10日、北九州市小倉北区の独り暮らしの男性(52歳)が自宅で亡くなっているのが発見された。生活保護を受けていたが、2007年4月に受給廃止になっていた。最後に「おにぎり食べたい」と書き残していた(朝日新聞 2007年7月11日付 東京夕刊17ページ)。
彼は、長年働いていなかったわけではない。前の年である2006年の10月まではタクシー運転手だった。アルコール性肝障害になり、通院した。2006年12月7日、「病気で仕事ができない」と生活保護を申請し、認定された。だが翌年2007年2月、福祉事務所のケースワーカーから「働いたらどうか」と勧められ、生活保護を辞退したという。専門家は、この事例に関し「たとえ本人が自発的に辞退届を出したとしても、ケースワーカーは受給者が困窮する恐れがないかを検証し、受給者にきちんと説明しなければならない。自治体の対応は疑問だ」としている(2007年7月12日付朝日新聞西部朝刊27ページ)。
映画の中では、おにぎり食べたい、が
お○○○○○○
というラストになっていました。
いいんだけど、、
今、この時だからこそ
思うにこの作品に真の意味での悪人というのはいなかったように感じる
それぞれの立場や正義があり、どの考えにも正当性が存在する
全てを救うことは出来ないということも事実であるだろうし、原理原則に乗っ取る というのは不正受給や過度な業務量などを鑑みても致し方ない部分もある。
ただ、救われなかった。最後の頼みにすら見放された人々の思いは計り知れない。
もしかすればそれは逆恨みなのかもしれない。
それでも社会の最下層に取り残された人々の声は、そういったことでしか届かないのもまた事実だ。そう強く考えさせられた。
震災によって潰えてしまった命、そして生き延びたけれども社会の隅でかき消されてしまった命
救いの手を差し伸べられたかもしれない
そういったひとつひとつの命に手向けるような、作り手の思いを感じました。
コロナ禍という未曾有の事態の中、困窮する人々が全国的に溢れている今だからこそ
そういった人々を社会がどう護ってくべきなのか
改めて響くものがある。
悲しいお話だった
東北震災後の生活保護担当者への連続殺人事件のお話
震災の時はずっと仕事しててお昼ご飯食べるためにテレビつけた時の感想は『何これ?』だった
それくらい現実感がなかった
でも被災した人達は大変な思いをしたのだろうし、それはまだ終わってないのだとも思う
だから震災関係のお話をみると辛くなります
とても悲しい話だった
被災直後から避難所生活のお話になり生活保護の話へ
そこから泰久兄ちゃんカンちゃんけいさんの3人の人物像が語られて3人には感情移入できるのだが生活保護担当者(被害者)のほうはあまり語られない
被害者の事を役所の人間は口を揃えて素晴らしい人だったと言うけれど受給の許可がおりなかった側や犯人からみればいろんな思いがあったと思う
担当者側の煽りに見える言動もあったけどあれも受給できなかった側からの視点だった
それにどんな意味や意図があっても受給できなかった側からすれば『助けてもらえなかった。この人達が認めてくれなかったから』という事しか残らない
担当者側にだってそれなりに理由や悩みがあったのではないかと思う
誰だって好き好んで嫌われる役なんてやりたくない
一人で懸命にお墓をなおしていたりしてるのをみると本当に殺されなきゃいけなかったのかなと思ってしまった
『死んでいい人なんていないんだ』この言葉がもっと早く犯人に届いていたらと思うと悲しくて悲しくてたまりませんでした
ずっと気になっていた息子の事
蛇足のような気もしたけれどちゃんと説明してくれて
ホッとしました
汚名は挽回じゃなくて返上ね。
震災から9年、宮城県の福祉関係の仕事に従事する男性が無人のアパートの一室で手足を拘束され餓死させられる殺人事件が発生し巻き起こる話。
東日本大震災で妻を亡くし息子が行方不明となった刑事のが事件を追うと共に、放火で服役し仮出所中の男の震災後の様子を軸にみせていく。
避難所でやさぐれていた青年と、彼と意気投合した少女と老女との物語は皆何かしらを抱えながら拠り所をみつけて生きる姿をみせたり、生活保護の不正受給や、本当に必要な人が審査に落とされる現実、受給者の権利はどこまで許されるのかなどを描いたり、殺人事件云々とは別のところでのドラマだけでも充分面白い。
ただ、いつ容疑者にあがった?からの、いきなり彼が追われる展開は、背景を判っているから受け入れられたけれどちょっと急過ぎる様に感じたし、犯行のタイミングがビンゴ過ぎませんかね…なんて少し突飛なところもあったけど、悲しくやるせないストーリーがとても良かった。
心抉られる名作 震災の傷痕は疼き続けて
原作は未読。必ずこれから購入して読もうと思いました。
観賞後、心が抉られました。おそらくこれからしばらくの間はこの映画のことを思い出し続けるでしょう。
ミステリーとしては「誰が」は比較的分かりやすく、「どうやって」はあまり重視されず、いわゆるホワイダニット=「どうして」を考えるタイプです。
犯人も、被害者も、刑事たちも、登場人物はみんな震災という「怪物」で傷を負った人たちです。(東京から来た主人公刑事の相棒刑事だけはそういう点では第三者だが)。
この作品には「嫌なやつ」がたくさん出てきます。「なんだこいつは!!」とムカつく登場人物がたくさん出てきます。二人の主人公も、その周辺の人物も。いわゆる「善人」としては一人も描かれません。
「誰も悪人ではない」みたいな単純な言葉は使いたくはありませんが、少なくとも「震災」がなければ「嫌なヤツ」にならなくて済んだ人たちが大勢いるんだと、そう感じさせる映画です。
誰しも護りたい人とか物があります。「絆」だとか「助け合い」だとかポエムのような言葉ではなくて直接的に手を差し伸べたいと思うこともあります。
しかし、私たちにはそれを護りたいと思っても「勇気」や「力」が足りないという現実に直面する場合が多々あります。全てを護ることなど到底出ないのかもしれません。
あの震災を経験した我々日本人は多かれ少なかれ心のどこかに罪悪感のようなものを抱えています。護れなかった、見捨てた。3月11日をむかえるたびに罪の意識のようなものがチクチクと痛みだすこともあります。
この映画の主人公二人の姿は私たちにその癒えない罪悪感に対してどう向かい合ったらいいか、その一つの解答を示してくれているような、そんな気がします。
震災を描いた作品はいくつもありますが、本作はその中でも特に「震災後の私たちがこれから、あの日とどう向き合っていったらいいか」を描ききった名作だと思います。
個人的には今年の邦画で一、二位を争う作品だと感じました。
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