護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価
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暗い時代に暗いテーマの作品はウケない。コロナの終息に希望が見てきましたがさてどうなる?
つい最近まで、コロナの影響で社会活動に制約がかけられ、重苦しい日常生活を過ごしてきました。
この作品は東日本大震災とか生活保護とか暗いテーマを物語の背景に使ったサスペンス作品です。
瀬々監督作品ですが、正直なところ彼の作品は好きではありません(「楽園」とか最低、「64」もNHKドラマの方がずっと良い)
一方、今作の主役の阿部寛が刑事役を演じた「祈りの幕が下りるとき」(福沢監督)は好みです。
ということで、知人に勧めることのできるような作品なのかな、おっかなびっくり見ていましたが、うーん、やめておいた方がよいと思う作品でした。
ミステリーとして、犯人はすぐわかります(伏線があるわけでなく消去法で特定できます)
ただ、動機は分かったようでわかりません。
あと、餓死により殺すことには意図があるのですが、時間がかかることから犯人にとって身の危険を伴うことになり合理的ではありません。
犯人が思う理念と犯行内容がうまく整理できていません。
阿部寛と佐藤健が主役ですが主役2人いると焦点がボケてしまいます 云々・・
生活保護というセーフティネットの網目からこぼれ落ちている人がいるというテーマは重要ですが、社会全体がコロナで疲弊している中でウケないだろうと思います。
あと、繰り返しですが今作の阿部寛は東野作品中の加賀刑事とは全く関係ありません
点数はチョッと甘目です。
犯人探しではないですね
原作は読んでいません。
物語は殺人事件が起きて観てる側も犯人を考えていきますが、本編のテーマが犯人探しじゃなくて震災後の生活や本当の復興支援てなんだろうと複雑な気持ちでした。前半に仮設住宅に住む女性が「国に迷惑をかけたくない」と言う言葉があって、この考えを変えたくて救いたい気持ちで精一杯だったのかと印象的な場面でした。
佐藤健さんの人物をどう観るか白か黒か。目つきと怪演な役が怖かったです。原作では佐藤さんの役は過去や素顔は具体的に描かれているのかな。
物語の見せ方や流れは、ズルいなと言う感想になるけど、各人物に過去の出来事があり真相が明かされて上手いこと繋がる..韓国ドラマや韓国映画を観てる気分になりました。
キャスト陣は豪華どの人物も難役でピリピリ感が
伝わる映画でした。
倍賞美津子の女優魂に引き込まれた
震災パートは、何度も何度も涙をぬぐった。遺体安置所で妻を確認する笘篠の表情を見ていられなかった。もし自分がその立場だったらと想像するだけで嗚咽しそうになる。
避難所でけいさんが、身寄りのないカンちゃんと利根を気遣い、いつしか3人は家族のような絆で結ばれていく。倍賞美津子の円熟なんて言葉では足りないくらいの女優魂で遠島けいを演じている。
そのけいと身を寄せ合うカンちゃんを演じる石井心咲がこれまたすごい。わざとらしい子供っぽさもなく、無口で無愛想な利根に泊まって行くことをおねだりするときの自然な演技にはびっくりする。この3人の物語をずっと見ていたかった。
生活保護制度の問題点を浮き彫りにすることがテーマであることはわかるが、福祉事務所の職員が利根に対して言い放ったセリフに違和感を感じた。役人の性として、後で不利になるような挑発的な言葉を吐くということは考えづらいし、セリフで過剰に説明しなくても分かりますよ観客は。
殺人にまで駆り立てる動機に釈然としないこともあって、後半は少し興醒めして鑑賞していたが、「死んでいい人なんかいないんだ」という利根の言葉は、深く心に刻まれた。この言葉を理念として制度を見直す必要があると思う。
そうだったのか!瀬々監督か
サスペンス映画ではありますが、人間ドラマ。 日本人なら見ておきたい映画
東日本大震災をテーマにした悲しい
物語ではありますが、
東日本大震災に関わらず、
様々な天災や人災の復興の影で悲しい
運命を辿った方々がお一人お一人
クローズアップされてないだけで、
沢山いらっしゃるのだろうな…と
とても考えさせられる作品でした。
日本人の、特にご高齢の方に多い
「人の世話にはなりたくない。」
「人に迷惑を掛けるのは恥ずかしい」
という、日本人ならではの美徳とも
言われがちな価値観が悲しい悲劇に
繋がってしまう事もあるのだな…と
認識させられます。
テーマ的にも
重い、暗い作品かもしれませんが
その中にも、
慈しみ、愛溢れるシーンが散りばめられ
見入ってしまいます。
日本人として、是非見ておきたい
作品だと思います。
逆にエンタメかシリアスどちらかに強めに振っても良かったかも。
東日本大震災、それによって生活を破壊された人達の悲劇を描いた作品です。
大きいテーマとして生活保護制度の問題を取り扱っており、知らない人には知らないまでも、当事者としてはとても大きなテーマとなっています。
事実である東日本大震災を下敷きに、更に生活保護制度の問題点を扱うとあって、非常に重たい映画ではありますが、意図してエンターテイメントとして成立させようという意思が込められており、そこまで気負って観なければならない、というわけでもありません。
それでは順に感想を述べさせていただきます。
俳優陣について
本作を論評するにあたり、いの一番に挙げなければならないのは主演陣の演技の素晴らしさです。震災で妻子を失った刑事、苫篠を演じる阿部寛さん、事件の容疑者と利根泰久を演じる佐藤健さん、福祉センターで働く、利根と旧知の丸山幹子を演じる清原果琊さん、そして遠島けいを演じる賠償美津子さん。何より、この5名が映画の軸を支える俳優として素晴らしい。この5人の演技だけで作品が成立しています。更には序盤にチラッとでる三宅裕司さんも僅かな出番でとてもいい味を出してますし、個人的にはうつを患った母子家庭の母親の演技!こちらは演技という点でリアル過ぎて怖い思うほどです。他にも豪華な俳優陣が出演するされています。
しかし・・・正直なところ他の登場人物については残念に感じるところが多かった印象です。主に、警察組織の人間の演技。仰々しすぎます。いちいち喚かなくてよろしい、といいたくなります。また、苫篠とバディを組む蓮田刑事も、意図した役作りなのかもしれませんが、ちょっと嫌味が強すぎる感じがして、序盤は彼の姿を見るだけでちょっと醒めてしまいました。
ストーリー、脚本について
震災当時の出来事から始まり、その9年後の二つの舞台を時折ザッピングして描かれています。本作はシリアスなテーマを下敷きにかつエンターテイメントとして成立させる試みがなされており、事件をめぐるミステリーがその部分を負っていると思います。他方、震災時の避難所のありようや、生活保護をめぐる問題については丁寧に描いており、そのための長尺となっているのかと思います。昨今の、2時間を超える作品が増えているようで、慣れてしまった部分もあるかと思いますが、それほど間延びする事なく観れると思います。ただ、シリアスとエンターテイメントのバランスについてはもっと調整する余地はあるように思います。いっそ思い切りエンターテイメントに振って、風味として社会問題を取り扱う、ぐらいでも良かったかもしれません。ストーリーについては「展開が読める」というレビューも見かけますが、まあ個人的には最後まで飽きる事なく観れました。
音楽について
本作の音楽を担当された村松祟継さんは「音楽として主張せずどれだけ役者の演技に寄り添えるか」とインタビューに答えています。
確かにその通りで、悪く言えば全く音楽の印象が残っていません。いや、曲が悪かったとかいうわけではなく、場面場面でそれにあった曲は流れていたとは思うのですが、全く記憶に残っていないのです。その意味で狙い通りだったのではないでしょうか。そういった意味において良い仕事をされたと思います。
ただ、一点。音楽について言えば難点があります。
タイアップ曲の桑田氏の曲。詩だけ見れば、本作と合わなくもないのですが、楽曲としてエンディングで流れた時、全然会っていません。
タイアップたるもの、それも集客力に繋げるものであり、ファンならそれがプラスに働くでしょうが、ファンでもなく、さらに映画に合っていないとなったら作品の質を落とすだけではないでしょうか。もっとも作中BGMが先に述べたように主張の弱いものであるため、サウンドトラックなどの発売にあたり、売れる曲を持ってきたかったのかもしれませんが・・・。
個人的には失敗だと思います。ボーカル入りの曲を使うのならば、本作には年季の入った女性ボーカルが良かったと思います。
余談、パンフレットについて。
本作のパンフレットは俳優、スタッフへのインタビューのほか、スタッフの制作秘話、ロケ地の裏話的なものなど読みごたえのあるものになっています。
しかしながら、最後の方のコラムに某ジャーナリスト氏が寄稿されています。
これが正直余計。いえ、これだけで評価ダダ下がりというか、買って後悔しています。
生活保護がテーマですし、なるほどこの手の輩がしゃしゃり出るのはある意味当然かもしれませんが、まともなジャーナリストならともかく、正体の割れたインチキ野郎のコラムなど本人以外誰も幸せになりません。
以前も、別な作品で同じような輩にコラムを依頼していたものがありましたが、薄っぺらい反日リベラリスト(笑)の駄文など読みたくもないので、今後は考慮願います。
さて、つらつらと描き連ねて参りましたが、結論としては5段階中、4とさせて頂きます。
作品の掲げたテーマ、そしてそれを表現した俳優陣はとても素晴らしいです。
他の方が本作について「政治家が観ろ!」と主張されていました。それはそうなんですが、一人一人が自分の事として捉えて考える事がより大事かと思います。そういった点で、人に勧めたいと思いますが、そうなると逆に作品の「重さ」が気になります。その意味に於いても、もうちょっとエンタメに振ってもよかったのかな、とも思います。
とはいえ、個人的にはとても良い心の栄養を頂けたと思います。
良い作品をありがとうございました。
また、最後までお読み頂きありがとうございました。
死んでいい人なんていない
声を挙げることを躊躇う人たちへ
東日本大震災で家族や生活を失い、絶望と孤独、生き残ってしまったことへの罪悪感の最中に出会った三人の“家族”。ある人の死によって再び訪れた絶望と怒りによって起きる哀しい悲劇が、ミステリー要素はあれど社会派人間ドラマとして終始重苦しい空気感を纏い描かれていました。
ストーリーは正直普通で、真犯人や動機、ラストのオチの付け方も全て予想通りの展開。どんでん返しや想定外の出来事はほぼ起きません。生活保護を巡る現状や問題点、それに伴い放たれるメッセージ性も、意外性はなく、よく聞く内容ではあります。
それでもストレートに放たれる「苦しかったら声を挙げて。繰り返し。図太く。それは恥ずかしいことや間違っていることじゃない」という言葉に胸は熱くなりましたし、何より東日本大震災の直後は、本来“普通”の人も、哀しみと疲れと不安でおかしくなっていたということが、生々しいリアルを感じました。
また、正論を振りかざすだけでは救えないものがあることや、どうしても曲げられないことや人間の尊厳の考え方は個々人で異なることも描かれ、なんとも切なく、人を救うことがいかに難しいことかが伝わってきました。
全体的には瀬々監督の作品のテンポや表現が元々あまり好みでないことや、意外性の無い展開に終始したことで満足度は低め。
でも佐藤健さんの演技はとても良かったです。孤独で虚勢を張った哀しげな表情の中で、ふと見え隠れする優しさや愛を求める目が作品に色を与えていました。
こんな.....
何故なんだろう?きっとボロ泣きするんだろうと覚悟して観たのですが、...
エンディング。。
想像してたより生々しくて重い話でした
新参者ではない。おかえりモネでは・・・あるかも?
阿部寛が刑事というチラシを見て「加賀恭一郎シリーズの新作か?」と期待して、原作者が違うという事を知った後は「新参者のイメージを越えられるか?」と不安だったのですが、開始早々まるで違うバックボーンを持つ刑事という事が分かり一安心。主演は佐藤健で、デビュー当時から屈指の演技派な彼の基本つっけんどんな表情からの笑顔はこちらも嬉しくなるのですが、もう一人の主演ともいえる清原果耶が今放送してる「おかえりモネ」で演じている役と共通点があるのに全く違う方向に突き進んでいるのが印象的でした。でも多分(おかえりモネはまだ未完なので)同じところに着地するのでしょうね。映画観ている時は気づかず泣きましたが、後から気づいて笑ってしまいました。
「新参者」シリーズ(ドラマの演出の話なのであえてこう泣きます)は真相をなるべく引っ張って、どうしてこういった不思議な事件が起きたのか最後に一気に明かして涙を誘います。それに対して、この作品は連続餓死殺人事件という、一見「セブン」の胃が破裂して死ぬまで食べさせるという猟奇的な事件の逆バージョンかなと思うくらいショッキングな事件の真相が作中なんとなくこういう理由かな、と捜査状況より先にいわば神の視点で先読み出来る作りになっているのでサプライズ的な楽しみは減りますが、2時間サスペンスによくある後出し感は感じずに済んで、すっと納得できる作りになっていました。サプライズが薄い代わりに本筋と関係ないところで主に阿部寛がフッと言うセリフで泣かされてしまうのです。
また、この映画、連続殺人事件なのに根っからの悪人がいないんですよね。犯人も被害者も全員善人。そこがこの作品のすごい所だと思いました。
死んでいい人なんていない
おかえりモ・・・カンちゃん
東日本大震災はモンスターだった。容赦なく人を飲み込み、甚大な被害を与えた。しかし、生活困窮者、餓死者が増えるというのは人災だ。この作品、コロナ禍で公開されたことには大きな意義がある。震災と同じように経済的な打撃を与えられた者、隅々までは渡らない公的支援。自殺者、餓死者・・・家が倒壊するなどの見える災害ではない上に市民は外出も控えなければならないという、もっと厄介な現実。
「最終的には生活保護がある」という首相の発言があった通り、障害があるなどして働き口がなかったら、正割保護はセーフティネットとなるのは間違ってはいない。ところが世間体があるので受けたくない人も多く、受給者人数はコロナの影響で爆発的に増えてるわけでもない。そして、“スティグマ”という言葉も飛び出しましたが、差別という問題も生じている。そして1%と少ないながらも不正受給の実態があること・・・
「自助・共助・公助」といった発言はとても危険。上から「生活保護申請するな」と言ってるようなものだ。映画でも紹介されてたけど、丁寧に対応したり助けたいと願う職員がりるにもかかわらず、国からの圧力が凄まじいのだと。私事ながら、今年の月次支援金を申請する際、国は払いたくないのだと実感した。不正受給を防ぐためだと説明しつつも、実際の詐欺事件は経産省の職員が絡んでいたりと、官僚自らが行っていたことも発覚。税金を取るだけ取って、支払う段になって全くお粗末な対応としか言い様がないのが実態です。おまけに中抜き。
「扶養照会」については、DVなどを理由に親族と疎遠になってた場合などは連絡しなくてもいい(この作品に関しては微妙)。とにかく、そうやって申請時には杜撰な対応をされたり、何かと却下する理由をつけられがち。ホームレスになっている、現金を持っていないなど、すぐにでも手を差し伸べなければならないときは積極的に保護するという意見書が2020年に提出されたこともあるので、護らなければならない人にはそう伝えるようにしたい。
震災よりもむしろ生活保護に関するメッセージが盛りだくさんでした。役者もみんないい。高校生役から役所職員役までを難なくこなす清原果耶ちゃん、最高です。ずっと泣かされました。また、血の繋がらない家族の物語は最近やたら増えてますけど、この作品もその一つ。助演女優賞は確実でしょう。
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