劇場公開日 2021年10月1日

  • 予告編を見る

護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価

全354件中、1~20件目を表示

5.0公助が崩壊した社会

2021年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

こうした正邪を割り切れない骨太な人間ドラマをヒットに導けるのは、日本では瀬々敬久監督だけになっている。震災で多くの生命が失われ、残された者たちは懸命に生きる。しかし、震災で生き残れても貧困が襲いかかる。本作は生活保護を題材に、社会の理不尽を描く。だれもが精一杯生きている。精一杯生きているから追い詰められて、最後には疲れてしまう。なぜ役所の人間は、生活保護が必要な人をぞんざいに扱うのか。彼らも終わりの見えない業務に疲れ果てている。そのツケがどんどん弱い人のところに溜まっていき、悲劇が見えないところで起こっている。
自助・共助・公助という言葉がコロナ禍で使われたが、自助だけでは生きていけず、震災のような未曾有の災害が起きれば皆が苦しいのだから、余裕を持って共助できる人は限られる。そういう人間を救うのが公助の役割なのだが、法律改正によって公助で救われる人が少なくなってしまった。そのことへの怒りがこの映画にはある。
役所の人間が、生活保護法の改正の件について長台詞で「説明」する。あれは完全に説明ゼリフだ。巧者の瀬々監督も脚本の林さんも、あれが映画全体の中で浮いてしまうことはわかっていたはずだ。それでも、はっきり言わねばならないことだったのだ。

コメントする (0件)
共感した! 35件)
杉本穂高

4.5生活保護×3・11のテーマ性がある社会派ミステリー作品。刑事モノのミステリー映画を楽しみつつ大切な仕組みの知識も得られる!

2021年10月1日
PCから投稿

本作は宮城県が舞台で、東日本大震災において最大の犠牲者を出した「津波」で被害を受けた人たちにまつわる話がメインです。
そして、私たちが知っておくべき「生活保護」という大切な仕組みが大きなテーマにもなっているので、是非とも社会問題の1つとして考えてみてほしい作品となっています。
本作は少し独特な作りとなっていて、大きく「2011年」と「2020年」の2つの時間軸が行き来するのです。
最初は「2011年」から始まりますが、その後で「9年後」という親切な表示が出ます。ただ、それ以降の表示はなく、いつの間にか「2011年」に戻っていたり、「2020年」になっていたりします。
さらには、「2011年」と「2020年」と“その間の期間”もあるため、「今はこの3つのどこか」と時間軸を見分ける集中力も大事になるのです。
それが出来れば、あとは生活保護に関する大事な解説や事例が分かりやすく出てくるので、それを知って観察してみると、「制度の理不尽さ」や、職員の対応がどうなのか、など普段あまり目にしないものが自然と見えてきます。
ただ、現実に役所は人が足りないことも事実ですし、今回のケースでは、大災害によって仕事量も半端ではなく、全ての人に寄り添って対応をするのには無理もあります。
「生活保護」という仕組み1つをとっても、これだけ多くの考えるべき材料があることが分かる、とても大切な映画。
もちろん佐藤健、阿部寛、清原果耶を筆頭に役者陣は非常に上手く、その演技の応酬も見どころの1つである良質な作品です。

コメントする (0件)
共感した! 71件)
細野真宏

4.5豪華キャストの入魂の演技とアンサンブル。生活保護の問題に迫る姿勢も貴重

2021年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

知的

容疑者・利根役の佐藤健は、前に瀬々敬久監督と組んだ「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の主人公や、朝ドラ「半分、青い。」の律役など、善良で優しい青年を演じさせても十分、上手い。だが、役者としての凄みを感じさせるのはやはり、怒りや恨みといった負の感情をふつふつとわき立たせて爆発させる本作のようなキャラクターだろう。衝動的な言動の場面での深い闇を感じさせる眼は、アドレナリンが過剰に分泌されているのではないかとさえ思わせる迫真度だ。

利根を追う刑事役の阿部寛はもちろん、連続殺人事件の被害者に永山瑛太と緒形直人、第3の標的に吉岡秀隆と、比較的出番の少ない役にも主役級の演技派を贅沢に配し、彼らのアンサンブルも味わい深い。大物から旬のスターまで、瀬々監督からオファーがあれば他の仕事を断ってでも参加したいという俳優が大勢いることをうかがわせる。

一連の事件の重要な背景として描かれるのが、東日本大震災で被災して家族を失ったり生活困窮者になったりした人々の体験と、時折報道でも取り上げられる生活保護をめぐるさまざまな問題だ。俳優たちの熱演に加え、日本で生きる私たちに直接突き刺さるような鋭い社会派のスタンスがあるからこそ、本作の鑑賞が“体験”として心に深く刻まれるのだろう。

コメントする (0件)
共感した! 59件)
高森郁哉

4.5殺人の裏側に隠された衝撃的な現実に涙する良作

2021年10月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

東日本大震災と生活保護という一見シンプルな題材から、殺人犯が現れるという意外な作品。
登場人物の大半が心に深い傷を抱え、仕事をしながら必死に生きていこうという姿が伝わってくるうえに、基本的に温かみを感じるシーンが多い。
しかし、殺人が起こってしまう。
餓死という形は、何かの暗示なのか。
殺人犯が残酷な行動に至るまでの大きな道のりが本編にはヒューマンドラマという形になって隠れている。その原因は、序盤から丁寧に描かれているため、もう一度見返してみたくなる映画。
佐藤健(容疑者)と阿部寛(刑事)の演技は言うまでもなく、豪華なキャストが演じる役柄も重厚で、発する言葉や表情を一瞬でも見逃すことはできないほど奥深い。
まずは、エンターテイメントとして1回目を見て楽しみ、可能なら、2回目で社会をより深く考えるというレベルの濃密な内容。
「守る」ではなく「護る」になっているという理由のヒントが本作には詰まっている。

コメントする (0件)
共感した! 64件)
山田晶子

4.5人間の尊厳

2025年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

もしかしたら3回目の視聴かもしれない。
しかし、当時はボーと見ていたので、詳細な内容についてまで考えていなかった。
ここ数日このタイトルが目に留まったことで、もう一度見てみようと思った。
このタイトルは狭義の範囲内で多義的要素を持っている。
震災で亡くなった方々にたいするもの 守れなかった家族に対するもの 守るべき国民がいるにもかかわらず守ろうとしない人々に対することなどが含まれている。
さて、
この物語は震災をモチーフに、貧困層の救済のハードルを大きく上げている「生活保護制度」とそこで働く人々 そして貧困で亡くなったケイさんという登場人物に焦点を当てながら、「心の傷の深さ」を描いている。
そして、物語は「殺人事件」という動きで紡がれていく。
この殺人事件の動機こそ、震災で誰かを失った深い心の傷を、復讐という形で表現している。
幹子のセリフにもあるが、「震災とは怪物で、立ち向かうことなどできない」
どうしても抗えないことに対し、ケイさんが死んだのは「人間の所為」として、そのはけ口を生活保護制度を管理する者たちに向けた。
このごく一般的な視点と深い心の傷によって、幹子はどうしても許せない3人を襲った。
この物語はミステリーとしてもよく出来ていた。
犯人の目的は明確にもかかわらず、そこにどんでん返しを仕掛けている。
また、事件を追う笘篠刑事の心の傷を描くことによって、同じ境遇の人々それぞれの矛先が違うのも考えさせられた。
そこには立場の違いがあったが、同じ痛みを共有していることで、わかり合おうとする「繋がり」を感じることができた。
震災という名の怪物によって傷ついた人々
身寄りのなくなった3人が、家族のように生活を始めたこと
ケイさんの過去の心の傷 娘の存在と決して自分の存在を知られたくないことが、生活保護申請を取り下げた。
その事はお金の問題でしかなかったが、ケイさんは失ってしまった家族が震災によって復活したかのような幸せを手にできた。
他の誰かの養子となった幹子は、震災で死んだ母よりもケイさんを母だと思っていた。
仕事を求めて宇都宮に行った利根ヤスヒサ
彼の状態は震災直後からどこか他の人とは違っていた。
そこに貼られた伏線
回収まで少々長く、それそのものがミスリードとなっていた。
「全員を救うことはできない」
これは本当のことだろう。
しかし、幹子が市役所に入って「救い」と「復讐」を兼ねたようなことを決意していたのは、かなり驚きだった。
ケイさんを連れて申請に行き、ケイさんが餓死して担当者に詰め寄るヤスヒサ
担当者の冷酷な言葉を聞きながら、高校生の幹子は「決心」したのだろうか。
連続殺人事件が報道されたことで、ヤスヒサは犯人は幹子ではないかと疑った。
だから育った家に行って住所が書かれた郵便物を拝借し、彼女のことを調べた。
ただしこのことは詳細には語られない。
同時にミスリードという設定を殺すわけにはいかない。
このあたりが、この作品の難しさと是非だった。
そして着地点を、笘篠刑事の息子の最期に沿えていた。
これこそ笘篠刑事がずっと探していたことだった。
それに応えるように息子の形見の時計のアラームが鳴る。
「はいよ」
そのアラームに答える笘篠
そこには息子の最期を見届けてくれた感謝と、息子はもう空にいるんだとあきらめに似た納得があった。
深い心の傷に向き合うことはいったいどんなことなのか?
この作品は、やり場のない憤りを描きながら、それを共有していたわりあう作品だった。

コメントする (0件)
共感した! 24件)
R41

4.0護られなかった タイトルが腑に落ちる

Nさん
2025年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

護られなかった人達が絡み合って、タイトルの意味が理解できた。こういうメッセージ性のある映画は観ていてストレートに伝わり、清々しい。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
N

3.52回目鑑賞

2025年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

最近清原果耶さんにハマってしまったので数年ぶりに2回目鑑賞。
ケイさんのために親身になれる大人がもう一人でもいれば、少女と社会性の乏しい青年二人だけではなく別の人間がいれば....悲劇は避けられたのではないかと思う。
主演男優2人はもちろんだけど、やはり果耶さんはいい、初見時は全然知らなくて、なんだこの子は?と衝撃を受けたが、改めて観て表情だけでの演技が本当素晴らしいと感じた。出演当時19歳ぐらいだったはずなのに、存在感がすごすぎる!
変な地上波ドラマなどでないで、もっと主演映画を製作してほしいです。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
monmonshi

4.0何故最後にありがとうと

2025年7月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笘篠は利根に言えたのか。
それは、笘篠か誰よりも彼を理解したから。
自らの目で耳で行動で。
利根の生い立ちから、その後の円山との出会いを通じて、笘篠の子を救えなかった悔恨の念だけでなく、本当の家族よりも強い絆を創り上げた事実を笘篠は知っていたから。
作品に散りばめられたピースが、あの場面で結実した気がした。
誰もが善と悪を持つ。
法を守る事が善、破る事が悪。
そんな善悪の定義をあの大震災が歪めてしまった。
なんとも言えない、後味の悪さ。
最後の場面は、それだけで終わりにさせない人本来の善を魅せてくれたと思う。
笘篠のありがとう、に救われました。
良い、と言う事が正しいのかわかりませんが、良い映画でした。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ようかんニコ

2.0社会性あるテーマとミステリー

2025年7月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

斬新

ドキドキ

生活保護と東日本大震災をテーマに、ミステリーが絡んでいて、とても社会性のある題材だなと思いました。
キャストやストーリーの前情報はあまりない状態で、評価が高かったので視聴しました。
倍賞さんが役と合っていなかったと思います。もっと他の優しいおばちゃん役の方がよかったです。
ただそれを差し引いても、なんだか入り込めず評価は低めです。
映画としてまとまりは良かったと思いますが、テーマがデカくて過大評価されているようにも感じました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
naopon

5.0血のつながり以上のもの

2025年4月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

未曾有の災害の裏で、同じようにそれぞれの苦しみをかかえた人々が存在するのだろうと思った。血のつながりは関係ない、それ以上のつながりも存在し、それを糧に生きている人もいて、その絆は相当のものだと。
佐藤健の演技がすごかった。迫力が画面越しに伝わってきた。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
みゅう

3.5皆傷を負っている

2025年4月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

私も東日本大震災の被災者の一人として、同震災関係の映画は観るように努めてます。
始めはスローモーな滑り出しですが、阿部寛が登場すると、展開が生き生きし始めます。それぞれ震災で心の傷を負った登場人物が織りなす人間模様には考えさせられます。生活保護の第一線も垣間見られる。真犯人は中盤までみれば気づきます。そういう点ではミステリーとしては出来が悪い!?。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
コーヒービート

4.5本当は★5。震災ネタと言う事で客観性を保つ意味で-0.5を理解して欲しい。

2025年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

とても丁寧に作られた作品である。さらに演ずる役者の力量が圧巻であると同時にそれに演出を掛ける監督の技量に感服する。最後の最後まで仕掛けが細部にわたって施されてあり、しかもそれが嘘っぽくないのはひとえに震災に関連させている事によるのではないか。震災にトラウマを持つ身としてはこの作品を完全に客観的に見る事は出来ないが映画としてかなり上質な出来であることは間違いない。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
mark108hello

3.0再確認を。

2025年2月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

最初で最後のセーフティネット。と言うのが凄く残った。
受けるべきでは無い人間、受ける必要の無い人間のせいで今まで真っ当に生きた人が割を食うのは認められないハズだ。
この制度は一度受給者を再度審査し本来必要な人に確実に行き渡る様にして欲しい。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
はまぐりの短い感想文

4.5様々な問題に正面から堂々と切り込んだ作品です

2025年1月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

震災については映画の空気感を重くする為にそれっぽく取り上げられる事はありますが、この作品ではきちんと取り上げられていて、あの時何が起こってその後に何が残されたのかについて深く考えさせられました。
そして、生活保護は不正受給だけに庶民の不満の声が集中し、本来なら受給すべき救われる筈だった人達がますます苦しい状況になっている問題点について深く切り込んでいて素晴らしかったです。
この問題は日本が抱え続ける負の側面だと思いますし、目を背けてはいけないものだと思います。
その事に改めて気付かせてくれたこの映画に感謝します。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
和哉

4.0護られなかった者、護りたかった者。

2024年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

採点3.8
震災後の宮城を舞台にしたヒューマンドラマ。
震災の実態と、生活保護の歪みを突きつけたような作品。
日本人だからか、これはものすごい重さがあった。
佐藤健と阿部寛の芝居はもちろん、脇を固める皆がよかったです。
また実地でしか分からないような事も知り得たし、特に生活保護を辞退することで娘を護ろうとした姿など、色々と考えさせられます。
護られなかった者、護りたかった者。皆のその生き様が描かれていました。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
白波

4.0観て良かったです

2024年10月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

原作とか読まない人間なんで、どんな作品かなと

当時、テレビCMは見たのですが、震災を舞台なので、ちと遠慮しようと思いまして、劇場では観ませんでした

コロナ禍と言う事もあって、くだらない笑える作品を選んで観てました(^^;

劇場には、妻と2人で行くので、辛い作品はあんまりって感じなので

良い役者さんが勢揃いで、作品に引き込まれて行きますね

コメントする (0件)
共感した! 2件)
premacy2010

4.0う〜ん

2024年10月14日
PCから投稿

最初からこういう映画だと知ってて観れば良いのだけれど、正直日曜の夜の気晴らしにと思ってたので、ミステリー度を期待して観ると、ちょっと〆に食べたかったものと違うものを頼んじゃった感がある。
正直時系列もついていけなかった。コメント見ると皆はわかってるみたいだけど。
基本的に都度都度理解して観たいので、何度か観て状況が分かるような映画は好きではないのだが、この作品は腹の中に何か重いものを残してくれた。
う〜ん、時間があればもう一回観てみたい。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
Aqira

3.0邦画だ〜

2024年10月6日
スマートフォンから投稿

泣ける

涙は出ちゃう

コメントする (0件)
共感した! 1件)
ぎょうざ

3.5サスペンスと思いきや生活保護について考えさせられる作品

2024年8月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

震災と生活保護を題材とした殺人サスペンス
殺人に関してはリアリティがないけれど、生活保護を申請する側、受理する側、どちらも震災で疲弊していた状況は当時現実にあっただろうし、今現在も未来にも起こり得るのだろうと考えながら鑑賞した。
生活保護の不正受給や扶養照会を恐れての辞退など、現実的で根深い問題も扱っているため考えさせられる。
作中では生活支援課の職員が悪役的に描かれているが、一方では被災した墓地の片付けをしていたり、餓死を招いてしまったことを後悔していたり、そう単純ではない。誰しもが護られなかった者、あるいは護れなかった者として、天災および人災の被災者として描かれている。
護られなかった存在として描かれるおばあちゃんだが、震災孤児となった主人公達を護り、生活保護を辞退することで生き別れた娘を護ろうとした事もどこか皮肉的だ。
全てを救うことはできないと悟りつつも、せめて、助けるために声を上げて欲しい、助けてもらうために声を上げて欲しい、この辺りが作品として伝えたいメッセージなのだろう。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
つくくん
PR U-NEXTで本編を観る