「言葉少ない雄弁な映画」護られなかった者たちへ ミレイユさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉少ない雄弁な映画
原作は未読だが、3人が出会うきっかけを「東日本大震災で被災した」と改変していて、全編に渡って震災の傷がうずいている。
そのため、事実上の悪役である被害者2人もまた、震災の被災者であり犠牲者として描かれている。
コロナ禍のため、撮影時期が4月から6月になったため、映画の風景も雨や曇天が多くなっている。これが作品の雰囲気に大きく影響している。
いつまでも晴れることのない湿った重い空気は、彼らの晴れぬ哀しみを表しているかのようだった。
サスペンス仕立てではあるが、映画の本質はサスペンスではない。
各自が抱える哀しみによって紡ぎだされる、悲劇と再生の物語である。
俳優陣は皆、セリフに頼りすぎない表現で雄弁に語り尽くしていた。
誰も震災の辛さを口にしないがために、唯一の非被災者である林遣都が感じた疎外感は、映画を見る我々の疎外感でもある。彼の目を通して、我々はあの日を追体験していたのかもしれない。
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