劇場公開日 2021年10月1日

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「声を挙げることを躊躇う人たちへ」護られなかった者たちへ まだまだぼのぼのさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0声を挙げることを躊躇う人たちへ

2021年10月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

東日本大震災で家族や生活を失い、絶望と孤独、生き残ってしまったことへの罪悪感の最中に出会った三人の“家族”。ある人の死によって再び訪れた絶望と怒りによって起きる哀しい悲劇が、ミステリー要素はあれど社会派人間ドラマとして終始重苦しい空気感を纏い描かれていました。

ストーリーは正直普通で、真犯人や動機、ラストのオチの付け方も全て予想通りの展開。どんでん返しや想定外の出来事はほぼ起きません。生活保護を巡る現状や問題点、それに伴い放たれるメッセージ性も、意外性はなく、よく聞く内容ではあります。
それでもストレートに放たれる「苦しかったら声を挙げて。繰り返し。図太く。それは恥ずかしいことや間違っていることじゃない」という言葉に胸は熱くなりましたし、何より東日本大震災の直後は、本来“普通”の人も、哀しみと疲れと不安でおかしくなっていたということが、生々しいリアルを感じました。
また、正論を振りかざすだけでは救えないものがあることや、どうしても曲げられないことや人間の尊厳の考え方は個々人で異なることも描かれ、なんとも切なく、人を救うことがいかに難しいことかが伝わってきました。

全体的には瀬々監督の作品のテンポや表現が元々あまり好みでないことや、意外性の無い展開に終始したことで満足度は低め。
でも佐藤健さんの演技はとても良かったです。孤独で虚勢を張った哀しげな表情の中で、ふと見え隠れする優しさや愛を求める目が作品に色を与えていました。

まだまだぼのぼの