「311をフィクションの舞台にするだけの時間が経った。」護られなかった者たちへ t2law0131さんの映画レビュー(感想・評価)
311をフィクションの舞台にするだけの時間が経った。
愛する人すべてを一瞬のうちに失ったあの3.11。それぞれに心に癒えない傷を負った人々が寄り添って生きようとしていく。そして家族のようにいたわり合った愛する人を再び失うことで、痛切な事件が起きてしまう。追うものも追われるものも、あの日にたまたま生き残る側になった者だ。そして、生き続けるためのシステムから護られなかった者の慟哭がこの映画の主題だろう。
作品の通奏低音ともいえるあの3.11に起きた全てと、そして「生き残ったことで決着をつけなければいけないものを抱き続けた」登場人物がおりなす、まだ終わっていない惨禍が観客の心を打つ。そしてその終わっていない惨禍の是非が、が殺人事件として、世に問われる。真相が明かされる時、観客はその罪を憎むことができるのだろうか。ふたたび別れなければならない家族は、こののち、また再会できるのだろうか。
久しぶりに重厚な人間ドラマを描いた傑作を観た。今年のベストだ。
コメントする