劇場公開日 2021年11月3日

「「綺麗だ、って言える人がいるっていいな。」」劇場版 きのう何食べた? レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「綺麗だ、って言える人がいるっていいな。」

2024年1月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

本作はラストで史朗が桜を見ながら思わず口にしたこの言葉にすべてが集約されてる気がする。
異性だろうが同性だろうが自分がその時その時に感じたことを共有しあえる人がそばにいてくれるということがいかに尊いことか。
一見何気ないストーリー。何か大きな出来事が起きるわけでもなく、見る人によっては無理やり映画にしたと感じるかも。しかし本作は見終わった後にいろいろ考えさせられる。この何気ないという内容こそが重要だった気がする。

弁護士の史朗は賢二との食事の時間を大切にしていた。けして職場での飲み会には行かない。依頼も外食を余儀なくさせる案件は避けてきた。
家族が日々の食事を共にすることの大切さ。テーブルをはさんで近い距離で同じものを食べ、美味しいと言い合ったり、会話が自然と生まれる時間を共にすることは人間関係においては結構大切だ。共働きの二人はそんな何気ない時間を大切にしていた。だからこそお互いの些細な変化もすぐに感じ取れてしまう。本編ではそこからちょっとした物語が生まれたりもする。
共に同じ時間、同じ空間を分かち合うそんな二人の関係だからこそ、相手がもしいなくなってしまったらと互いが大げさにうろたえるさまをおもしろ可笑しく描いているが、確かに彼らのように大切な家族がいる者としてはけして笑えることでもないなと思わされたりする。

本作を同性愛者の映画と聞いて生理的嫌悪感を持つ人がいるのは理解できる。本作は一般受けを狙ってか性的なシーンは一切排除し、むしろその点を逆手にとってギャグとしてパターン化してるところが笑えた。
劇中で史朗の母親が息子のパートナーである賢二と対面した後に倒れてしまう。息子のことは理解してるつもりだったし、賢二に対しても好感を持てた。自分には同性愛者への偏見などないと思っていた、しかし体が受け付けなかった。同性愛を受け入れられる人、受け入れられない人がいる、どちらが悪というわけではなく、どうしようもないことなんだろう。
特に古い世代の人にとっては自分たちの家族観とあまりにかけ離れた新たな家族のカタチを受け入れるにはまだまだ心と体が追い付いてないのかもしれない。母親は息子が自分たち同様に女性と結婚して子供をもうけて、いわゆるごく普通の家庭を築くものだと思っていたに違いない。

今時代は過渡期に来ている。今までのいわゆる常識から、それにとらわれない新しい常識の時代へと、古い時代の人はそんな変化に急にはついていけない。
以前、森喜朗が女性蔑視発言で五輪組織委員会会長を下ろされた騒動があった。彼は女性を見下す時代を生きてきた人間であり、彼にとっては当たり前のことを言ったつもりなのだろう。だから発言の何が悪かったのか全く理解できない。女性の社会的地位が向上している今の時代の流れに意識が追いついてないのだ。
時代の変わり目、過渡期にはこのように戸惑う人間は多いはず。ただ、こういう人間は時代の流れに取り残されていずれ淘汰されていくだろうし、淘汰されるべきなのだ。特に政治家などは。

政治家は個々の国民の声に耳を傾けなければならない。その声を聴き、政策、法案につなげる。G7の中で同性婚を認めてないのは日本だけだ。同性婚を認めたら子が生まれなくなり、区は滅んでしまうとほざいていた東京の区議会議員がいたが、効果的な少子化対策もせずに、出生率最低をたたき出した政党の人間の発言としては本末転倒だ。

男か女か、雄か雌か、この違いは同じカードの裏表みたいなもんだと思う。もとはおんなじ、染色体の関係でどちらかに産み分けられる。自然界では繫殖を機に性別が変わる生物もいる。そんなことを思えば性差なんてとるに足りないことだ。生物学的には雄と雌が交尾して子孫を増やすのが一般的だが、同性同士が家族を作ってはいけないなどとどうしていえるのか。自分たちの古臭い家族観に固執して国民の声に耳を傾けない政治家は淘汰されるべきだろう。

フランスなどでは異性同性カップルに分け隔てなく育児補助金を出していて、そんな政策が少子化V字回復に貢献している。こういった個々人に寄り添う柔軟な政策が暮らしよい社会の形成につながれば人口増に転じるのは歴然だ。頭の固い連中が牛耳る日本では少子化による人口減はもはや避けられない。

ただ日本でも地域によっては同性パートナーズシップ制度など同性婚を実質認めようとする動きが出てきている。史朗と賢二が今後子供をもうけるのかはわからない。でも彼らのもとで育つ子供はきっと幸せだろうなと思う。

ラストで思わず口に出た史朗の言葉。当たり前のことを当たり前に感じた思いが自然に出たんだろう。そんな当たり前の思いが同性愛者であるということだけで踏みにじられる社会であってはならない。

劇場にて鑑賞。再投稿。

レント
りかさんのコメント
2024年1月12日

こんばんは♪
昨日はありがとうございました😊
こちらを覗いたら、確かに3つ目のコメントとして、
『遠い夜明け』のレビューもお願いします🦁と書いたのに見当たりません。レントさんにレビューさせるな⁉️でしょうか、失礼❗️
以前もコメントがなかなか入らなかったり、入れたのに無いのはたまにありました。レントさんだけじゃないですよ。返信結構ですよ🦁

りか
りかさんのコメント
2024年1月11日

ご丁寧にありがとうございます😊
こちらこそ、
今年もよろしくお願い申し上げます🤲

りか
りかさんのコメント
2024年1月11日

こんばんは♪
共感していただきましてありがとうございました😊
再投稿とは、一度削除されたのですか?
さすがのレントさん、本作で政治にまで持って行かれるとは、なかなか、
ですが、拝読させていただきますと、
おっしゃる通り、フムフムと読ませていただきました。一部同意できないところ、浅学な私ゆえ、思いつきで書いていますのですが、自然界の生物にいたっては、子孫繁栄の為異性同士の結びつきになるかと思います。同性同士は、人間しかないと思います。ミミズは、雌雄同体なので除外ですが。性転換する生物もいるのですか。←ここだけウーム❗️
政治のことは全く存じませずすみませんが、なるほどと思います。オリンピック飛び込みのイギリス🇬🇧選手、帰国して結婚式挙げてられるのを観ました。二人お揃いの白いスーツ着て。列席者皆笑顔。
違うなぁ、と思いました。チェリまほでは、ラストよく似た結婚式を挙げていましたが、実際の日本はどうなんでしょう。だいぶ前にアメリカの子供向け絵本に、お父さんがボートに男の恋人と乗ってデートしているのがありました。女性とは限らないと子供に教える意図だろうと思います。性同一性障害と同じく?本人たち自身の正直な気持ちがそうなので他者はどうにもできない、認めるしかないです。すると、やはり法制度に引っ掛かりますよね。レントさんのお気持ちだんだんわかって来ました。
あと『his』や『チェリまほ』もいいてすよ💕
レントさんが共感してくださるレビュー、何かな?
先程まで見ていた『遠い夜明け』にかな?とかかな、と思っていたら、本作、
最近もwowowで何回も放送されていてつい観てしまいます。何回観ているかわからない、ですが、何回観てもおもしろいです。ありがとうございました🦁

りか