「冒頭で投影先が、次々に死んでいく新鮮さが没入感を深める。」ザ・ハント ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
冒頭で投影先が、次々に死んでいく新鮮さが没入感を深める。
冒頭で飛行機内に、何者かに拉致された人々が示される。
次のシーンから、目が覚め、舞台設定に放り出される。
どうやらサバイバルらしい事が開始されるらしい。
ここからの導入部分が、めちゃくちゃ面白い。
(^O^)
意味不明な事だらけの中、観客はサバイバルに参加させられている人物から、
理解不能な世界観を知るための投影先、つまり主人公を探すのだが、
任意に選んだ人がいきなり殺される。
困惑の中、次にまた代用の投影先を探すが、これもまたすぐ殺されてしまう。
(´Д`)マジカ…
序盤の十数分は、次々に投影先が死んでいく。主人公が不在の導入部分。
たったこれだけの仕掛けで、物語の没入感がグッと深まる。
斬新というか、新鮮というか、今まであまり鑑賞経験がないスタートの切り方で始まる映画で、凄く不安になるのだが、
その分、集中力が増し、少ない情報から頭をフル回転させて、状況整理が行われる。
そんな中、ようやく「殺されない主人公」の女性が登場し、
しかも凄腕で敵方を瞬殺し制圧する。
「圧倒的な主人公感」を醸し出す人物の登場で、投影先を見つけ安堵する観客は、
もうこの時点で世界観を少しだけ理解し、どうやら殺されないように逃げなきゃ、
という物語の「目標」を見つける。
意味不明な事が続く映画は、普通は眠くなりがちだが、
この作品は意味不明な事が続くからこそ、目標の提示まで主人公を不在にし、登場を引き延ばす事で、
不思議な世界観を理解する時間に、呵責の猶予を与えている。
なんというか、日本の戦国時代の「天下人登場」と酷似する展開だと思うのだ。
∠( ゚д゚)/
戦国時代というのは、言い換えれば乱世の時代。
どうすればこの混乱した世が再び安定するのか、誰にもわからない。
将軍はザコキャラであり、次々に殺される。
将軍じゃダメだとなって、天下人が管領家細川になったり、
その家来の三好になったり、
そのまた家来の松永になったりするが、一向に安定しない。
そこで満を持して「圧倒的な主人公感」が漂う織田信長が登場する。
天下布武を掲げ、武力で天下一統し、乱世を終らすという目標を定める。
ゴールが決まれば、あとは流れに身を任せるだけ。
この映画も、女性の主人公に身を委ねれば、
ここは何処なのか、
なぜ人狩りのような事がおっ始まったのか、
なぜ彼らがターゲットになったのか、全てわかるのだ。
ただし、最後まで生き残るのは、信長か、秀吉か、家康かは、誰にもわからない。
それは、映画を観た人だけがわかる、最大の特典だ。
途中、保守派とリベラルの分断だとか、
陰謀論に支配されたSNSだとか、
米国に蔓延る差別や格差の諸問題とか、盛り込まれてるらしいけれど、
そんなのは頭デッカチな、自称映画批評家どもや、自称エリートの、クソみたいな考察ごっこに任せればいいだけの話で、
鑑賞後に人様のウンチクをカンニングし理解すればいい話。
そもそも私や貴方はアメリカ人じゃない。ざまあみろってなもんだ。
そんな事より、主人公が生き残れるかどうかに全神経を集中し、アクションを楽しめばいい。
時間が経つのが異様に早く感じた作品だった。
没入感がそれだけエグかったという事の現れだろう。