「少数民族の文化を「怖い」と感じることについて考えた」ミッドサマー ディレクターズカット版 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
少数民族の文化を「怖い」と感じることについて考えた
これはホラー映画なわけだが、少数民族の文化はこのグローバル時代にいかに護られるべきか、あるいは護ってはいけないのか、ということを真面目に考えてしまった。
あのスウェーデンの村の伝統文化は、現代社会の価値観では認めるわけにはいかない野蛮なものだろう。しかし、あの村ではそれを文化として護ってきた。それをグローバルな価値観でジャッジしていいのかどうか。
この映画は、そういう議論をホラー体験として語ることで回避している気もする。しかし、あの若者の一部があの文化に取り込まれていくのを見ていると、回避はしておらず、むしろその問題を真っ向から描いているとも解釈できる気もする。
そもそも、この村を怖いと思うのは、どんな視点で見た時か。僕らはなぜか、当然の前提として、近代人の価値観でこの映画を観てしまうが、そもそも、なぜその価値観の正当性はあるのかと疑問に思う必要もある気がする。
僕はこの映画を怖いと思った。しかし、これを怖いと感じることには、自分の中に、ある種の傲慢さがあるようにも感じた。
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