「秋好寿乃は杉咲花史上最高の当たり役」青くて痛くて脆い 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
秋好寿乃は杉咲花史上最高の当たり役
2020年映画館鑑賞74作品目
原作既読
わりと住野よる作品のファンなのでよく読みます
原作の世界観を一切壊さず映画向きに削ぎ落としうまく補充した成功作
映画くらいはネットから離れたいところだが現代劇だとそれは難しく時代劇じゃないと解放されない
自分はヒロインを杉咲花が演じることを知ってからこの小説を読んだわけだが彼女はこの役にハマりそうだなと思いながら読んでいた
答え合わせは100点満点だった
身長も声も髪型も顔つきもイメージに合致している
杉咲は堀内敬子なみに声がよく通る
ポンちゃん役の松本穂香も川原役の茅島みずきもバッチリ
ただし男たちの配役には多少不満がある
イメージとだいぶ違う
あくまで強いてあげるなら願わくばだけど
吉沢亮が演じた田端楓はイケメンすぎるし岡山天音が演じた董介はブサイクすぎる
逆の方が良かったのではと思いながら観ていた
いや吉沢亮の芝居は良かったよ素晴らしかったよ
アイドルのストーカーみたいな闇の部分も含めて
けれどもルックスが良すぎるかなあ
それに清水尋也が演じたテンはもっともっとチャラい感じであってほしかったし柄本佑が演じた脇坂はいかにも包容力があって知的で落ち着いたイケメンが演じてほしかった
まあそれは全て些細なことだが星は−0.5
森七菜が演じた西山瑞希や光石研が演じた大橋先生はオリジナルだしポンちゃんのキャラや設定がちょっと違うし最後の方の一年後の描き方も違う
だがそれでもいいんだよ
映画にとって漫画や小説は素材に過ぎないので多少の違いは当然である
トマトの苗をサラダと称してドヤ顔して勧める海原雄山のような馬鹿は映画人に存在しない
とはいえ素材を上手に生かして料理しなければそいつは無能である
ただそれを美味しいと思うかまずいと思うかは人それぞれ好みがあるから感想は違って当たり前
なりたかった自分の妄想は連ドラの『銭ゲバ』の最終回を思い出した
あれは原作の世界観を悪い意味で完全にぶち壊し興醒めしたがこっちは全く壊していない立派なものだ
小説もそうだが1番の見せ場は秋好が大学構内で密告者の正体を見破り2人が激しく口論する場面
もっと激しくバチバチにいっても良かった気がするがそこが物足りないので星−0.5
男女の口論といえば思い出されるのが漫画の『いとしのエリー』だ
学校の屋上で我慢の限界に達し不満が爆発して女教師と男子生徒が喚き罵り合い涙を流す名場面
昔の話のせいか強烈に覚えているのはそれしかない
星4は厳しいかもしれないが原作に対する想いが強すぎるだけの話で客観的にいえばこれは間違いなく傑作です
日本アカデミー賞で数々の賞をゲットするでしょう
まだ観ていない人はぜひ映画館に足を運んで観てください
あと『君の膵臓を食べたい』はこの程度では壊れません
びくともしません
予告編は嫌いです