「演技が見せる青春のリアル」青くて痛くて脆い jel1250さんの映画レビュー(感想・評価)
演技が見せる青春のリアル
思いがけなく素晴らしい作品だった。
大学の新入生勧誘、1人になるのが嫌で、1人だと思われるのが嫌で、とりあえず間に合わせで相手を見つける様子もまさにあるあるで、青かった痛かった自分を思い出させる。臆病なのを人との距離感とごまかす楓、前向きすぎて鬱陶しい秋吉はじめ、董介やポンちゃん、テンも登場人物のキャラクター設定にどれもいたなーと思えるところが、物語としては盛り上がりにかけるこの作品の心に迫るリアルさに貢献していると思う。
だが、やはり役者さんの演技が素晴らしい。あるあるもいたなーも、演技の良さがあればこそ。それぞれが自分の居場所や思い、自分とは?、本当にやりたいことって?など、迷いながら懸命に探していることが伝わり共感できる。
中でも主演の2人がさすがの一言。秋吉の痛いけど強い、迷いがないヒロイン像はともするとイヤな女になってしまうところだが、杉咲花は清々しく演じていた。3年後の微妙な変化も素晴らしい。森七菜のライブのチラシを無造作に置いたのがもし計算された演技なら天才。
吉沢亮の熱演がさらに凄い。彼の現実味がないほど美しいルックスが、演技すると全く思い出せないくらい現実味に溢れた人物として心に迫ってくるのは、研鑽を重ねて身につけた演技の力の賜物だろう。楓の行動も心情も文字通り「気持ち悪い」のだが、どこか共感してしまう、ラストシーンは応援さえしたくなるのは、吉沢亮の演技の誠実さ故だと思う。
残念だったのは、予告。夏の終わりにミステリーや復讐劇のワクワク感を期待して見に来た方にはガッカリの向きも多いかも。私自身は予告とは全く違う内容がとても心に残る2時間だった。
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